アイルランド国防軍

アイルランド国防軍：義勇の精神を受け継ぐアイルランドの守護者

アイルランド国防軍（Óglaigh na hÉireann）は、アイルランド共和国の陸軍、海軍、空軍を包括する組織です。アイルランド語の正式名称が示す通り、「義勇軍」の精神をその根底に持ち、国土防衛はもとより、国際社会の平和と安定にも貢献しています。

地理的優位性と中立政策

アイルランドは、その地理的条件から国土防衛において比較的恵まれた立場にあります。第一次世界大戦後、イギリスから独立して以来、中立政策を堅持。第二次世界大戦への不参加、NATO非加盟という選択をしてきました。しかし、EU加盟国として、NATOの平和のためのパートナーシップ（PFP）には参加し、イギリスをはじめとする欧米諸国との良好な関係を維持しています。特筆すべき領土問題も存在せず、外国からの侵略を受ける可能性は極めて低いと言えるでしょう。

国防軍の役割と目的

アイルランド国防軍は、限られた資源の中で、以下の目的を達成するために活動しています。

侵略に対する防衛・反撃能力の維持: 国土防衛の基盤となる能力を確保します。
国内治安維持における警察との連携: 国内の治安維持活動において、アイルランド警察を支援します。
国連平和維持活動への貢献: 国連の指揮下で行われる平和維持、危機管理、人道支援活動に積極的に参加します。
EUにおける違法漁業取り締まり: EUの合意に基づき、違法漁業の取り締まりを行います。
* その他: 捜索救助、医療搬送、政府要人輸送、災害支援など、多岐にわたる任務を遂行します。

歴史：義勇軍から国防軍へ

国防軍のルーツは、1913年に組織されたアイルランド義勇軍に遡ります。この組織は、後にアイルランド共和軍（IRA）へと発展し、独立戦争を戦い抜きました。1922年のアイルランド自由国建国後、IRAは英愛条約賛成派を中心に、アイルランド自由国の正規軍であるアイルランド国防軍（Irish National Army）として再編されました。1924年10月1日、正式に国防軍へと引き継がれ、Óglaigh na hÉireannの名称も受け継がれました。

しかし、この名称は、後に北アイルランド紛争などで活動したIRA暫定派など、複数のIRA分派によっても使用されることになります。国防軍は、これらの組織による正式名称の使用に強く反発しています。

歴史的経緯から、イギリスとの軍事交流は限定的であり、レンジャー部隊の教育などはアメリカ陸軍の支援を受けています。また、民族主義的観点から、号令は英語ではなくアイルランド語（ゲール語）で行われています。

能力：精強な兵力と装備

アイルランド国防軍は志願兵制を採用しており、2023年時点で約8,048名（予備役を除く）の兵力を有しています。内訳は、陸軍が6,531名、海軍が807名、空軍が710名です。2018年度の国防費は約11億740万ユーロでした。

特殊部隊であるレンジャー部隊は、テロ対策、要人警護、海外派遣地域での特殊作戦など、重要な任務を担っています。

装備面では、装甲戦闘車両、防空システム、爆発物処理車などを保有。海軍は、沿岸哨戒艇8隻、1,000～1,500トン級の艦船7隻、1,900トン級の艦船1隻を運用しています。潜水分隊も保有しています。空軍は、偵察機、輸送ヘリコプター、大統領専用機、そして機関銃とミサイルを装備したアクロバット用プロペラ機7機を保有しています。

国際貢献：PKOへの積極的参加

アイルランド国防軍は、国連PKOに積極的に参加しており、2017年12月末時点で、国際連合レバノン暫定駐留軍（UNIFIL）など9つのミッションに合計637名を派遣しています。

アイルランド国防軍は、その規模こそ大きくはありませんが、高い練度と規律を誇り、アイルランドの平和と安全、そして国際社会の安定に貢献し続けています。

公式サイト

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