アイ・スティル・ドゥ

アイ・スティル・ドゥ

『アイ・スティル・ドゥ』は、イギリスの著名なギタリストでありシンガーソングライターであるエリック・クラプトンによって、2016年にリリースされた通算23作目となるスタジオ録音アルバムです。この作品は、クラプトンが長年のキャリアを通じて培ってきた円熟した音楽性を反映しており、ブルース、ロック、アコースティックなサウンドが融合しています。

本作の制作にあたり、プロデューサーおよびエンジニアとしてグリン・ジョンズが起用されました。ジョンズは、クラプトンの代表作の一つである1977年のアルバム『スローハンド』でプロデュースを手がけたほか、1973年のライブアルバム『Eric Clapton's Rainbow Concert』のエンジニアリングを担当するなど、クラプトンのキャリアの重要な局面で共同作業を行ってきました。彼との再タッグは、往年のクラシックなサウンドへの回帰を示唆するものとして注目されました。

また、アルバムのジャケットを飾るエリック・クラプトンの肖像画は、著名なポップアーティストであるピーター・ブレイク卿によって描かれました。ブレイクは、ビートルズの金字塔的作品であるアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のアートワークや、ザ・フーのアルバム『フェイス・ダンシズ』のデザインなど、数々の歴史的なレコードカバーを手がけたことで知られています。彼が描いたクラプトンのポートレートは、アルバムに視覚的な深みと歴史的な重みを与えています。

収録曲には、オリジナルの楽曲に加えて、ブルースのスタンダードやカバー曲が含まれています。特に、ボブ・ディランが1967年に発表したアルバム『ジョン・ウェズリー・ハーディング』に収められている楽曲「聖オーガスティンを夢でみた」(I Dreamed I Saw St. Augustine)のカバーが収録されている点は特筆されます。この選曲は、クラプトンが自身の音楽的ルーツや影響源への敬意を示すものです。

アルバムには以下の楽曲が収められています。

アラバマ・ウーマン・ブルース - Alabama Woman Blues
キャント・レット・ユー・ドゥ・イット - Can’t Let You Do It
アイ・ウィル・ビー・ゼア - I Will Be There
スパイラル - Spiral
キャッチ・ザ・ブルース - Catch The Blues
サイプレス・グローヴ - Cypress Grove
リトル・マン、ユーヴ・ハッド・ア・ビジー・デイ - Little Man, You’ve Had a Busy Day
ストーンズ・イン・マイ・パスウェイ - Stones In My Passway
聖オーガスティンを夢でみた - I Dreamed I Saw St. Augustine
アイル・ビー・オールライト - I’ll Be Alright
サムバディズ・ノッキン - Somebody's Knockin'
アイル・ビー・シーイング・ユー - I’ll Be Seeing You
フレイト・トレイン - Freight Train

レコーディングには、クラプトン自身を含む経験豊富なミュージシャンたちが多数参加しています。主要な参加メンバーは以下の通りです。

エリック・クラプトン: ギター、タンブリン、ボーカル
ヘンリー・スピネッティ: ドラム、パーカッション
デイブ・ブロンジ: コントラバス、ベース
アンディ・フェアウェザー・ロウ: キーボード、コーラス
ポール・キャラック: ハモンドオルガン、コーラス
クリス・ステイントン: キーボード
サイモン・クライミー: キーボード、ギター
ダーク・パウエル: アコーディオン、マンドリン、コーラス
ウォルト・リッチモンド: ベース
イーサン・ジョンズ: パーカッション
ミシェル・ジョン: ボーカル
* シャロン・ホワイト: ボーカル

さらに、クレジットには「Angelo Mysterioso」という名義も見られます。これは、しばしばジョージ・ハリスンが匿名で参加する際に使用した偽名であるとされており、本作におけるそのクレジットは、音楽ファンの間で様々な憶測を呼びました。

『アイ・スティル・ドゥ』は、クラプトンの円熟したキャリアにおける重要な作品として位置づけられ、彼の変わらぬ音楽への情熱と、長年の協力者たちとの絆を示すアルバムと言えるでしょう。

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