アウテシオーン

アウテシオーン（古希: Αὐτεσίων）は、古代ギリシア神話に登場する人物で、テーバイの王族の血を引いている。長母音を省略してアウテシオンとも呼ばれる。彼の家系は、オイディプースの悲劇的な歴史と深く結びついており、その影響を避けるために故郷を離れる運命をたどった。

系譜と家族

アウテシオーンは、テーバイを治めた王ティーサメノスの息子である。ティーサメノスは、オイディプースの息子ポリュネイケースの子であり、したがってアウテシオーンは著名なオイディプースの曾孫にあたる。アウテシオーン自身もまた、後の時代の神話や歴史において重要な役割を果たす子孫を残した。彼の息子テーラースは、後にエーゲ海に浮かぶ島テラ島（現在のサントリーニ島）への入植を率い、その地の名の由来となったとされる人物である。また、娘のアルゲイアーは、ヘーラクレイダイの一員であり、ドーリス人のペロポネソス帰還を指導した人物の一人であるアリストデーモスと結婚した。アルゲイアーとアリストデーモスの間には、後のスパルタ王家を形成する双子の兄弟プロクレースとエウリュステネースが生まれたと伝えられており、アウテシオーンの血筋はスパルタ王家とも繋がることになった。

エリーニュスの災いとテーバイからの移住

アウテシオーンの人生における最も決定的な出来事は、彼が故郷テーバイを去ることになった理由である。古代の伝承によれば、アウテシオーンは、祖父オイディプース、さらにその父ラーイオスにまつわる血塗られた悲劇に起因する、復讐の女神エリーニュスの呪いや災いの影響を受けていたという。この家系が代々背負ってきた重荷が彼にも及び、テーバイでの生活を困難にしたため、彼は神託を求めた。神託は彼に、故郷を離れ、他の土地へ移り住むことを勧めたとされる。この神託に従い、アウテシオーンはテーバイを離れ、当時ドーリス人が支配していたスパルタへと向かい、そこに身を寄せた。この移住は、彼の個人的な避難であると同時に、テーバイにおける王位継承の歴史において一つの区切りとなり、また娘アルゲイアーを通じて、彼の家系がスパルタという重要なポリスと結びつく契機ともなった。

テーバイのその後

アウテシオーンがエリーニュスの災いから逃れるためにテーバイを去った後、故郷の王位は一時的に空白となったか、あるいは新たな支配者が求められる状況が生じた。神話によれば、アウテシオーンの移住後、テーバイの人々は新たな王としてダマシクトーンを選出した。ダマシクトーンは、テーバイの歴史において重要な役割を果たした人物であるペーネレオースの孫にあたるとされる。ペーネレオースは、テーバイ攻めの際にボイオーティア勢を率いた英雄の一人として知られている。このように、アウテシオーンのテーバイからの離脱は、直接的な王位継承の連鎖を断ち切り、ダマシクトーンのような別の家系からの王が即位する道を開いた。

神話における位置づけ

アウテシオーンは、自らの意思や功績によって歴史に名を刻んだ人物というよりは、ラーイオスとオイディプースの悲劇的な系譜の渦中にありながら、そこから脱出しようとした人物として描かれる。彼の物語は、テーバイの王族が代々受け継いできた呪いや運命の不可避性を象徴すると同時に、それからの解放を求める試みを示唆している。また、彼の子孫がテラ島やスパルタといった異なる、そして歴史的に重要な地域において基盤を築いたことから、アウテシオーンはテーバイの古い王統が他地域へ分散・影響を及ぼしていく過程における系譜上の結節点としての意味合いも持つ。古代の伝承や地理誌において、テラ島の起源やスパルタ王家の系譜をたどる際に、アウテシオーンの名が言及されることがあるのはそのためである。

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