アウラータ・クインテット

アウラータ・クインテット（Aurata Quintet）

アウラータ・クインテットは、国際的に権威あるミュンヘン国際音楽コンクール（ARD）を契機に誕生した、個性豊かな室内合奏団です。このアンサンブルの成り立ちは、ARDコンクールが実施する独自の取り組みに深く関連しています。

ARDコンクールは、例年、本選終了後の翌年夏ごろに、前年以前の部門優勝者や上位入賞者を集めた特別な室内楽音楽祭をドイツ国内で開催しています。これは、世界の数ある音楽コンクールの中でも非常にユニークな企画であり、一流のソリストたちが普段とは異なる組み合わせで室内楽を演奏する貴重な機会を提供しています。

アウラータ・クインテットが誕生するきっかけとなったのは、2006年6月に開催されたこのARD室内楽音楽祭でした。この音楽祭では、参加メンバーによる様々な室内楽曲が披露されましたが、中でも特に聴衆の絶賛を博したのが、シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」の演奏でした。ミュンヘンやベルリンなど各地での演奏は、聴衆に強い印象を与えました。

この時の「鱒」の演奏を担ったメンバーは、以下の通り、いずれもARDコンクールで輝かしい成績を収めた実力者たちでした。

ヴァイオリン: 岡崎慶輔（2005年優勝）
ビオラ: 清水直子（1997年優勝、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者）
チェロ: 趙静（Zing Zhao、2005年優勝）
コントラバス: ナビル・シェハータ（Nabil Shehata、2003年優勝）
* ピアノ: オズガー・アイディン（Ozgur Aydin、1997年優勝）

この五重奏での共演が大きな成功を収めたことを受け、ピアニストのオズガー・アイディンの発案により、彼らはこの音楽祭での演奏を単なる一度きりの共演に終わらせず、継続的な活動を行うアンサンブルとして発展させることを決めました。

アンサンブルの名称には、絶賛されたシューベルトの「鱒」にちなみ、ラテン語で「黄金の鱒」を意味する「アウラータ」を冠し、「アウラータ・クインテット」（Aurata Quintet）と名付けられました。こうして、ARDコンクールの優勝者たちによる夢のアンサンブルが正式に結成されたのです。

アウラータ・クインテットは、結成後すぐにその活動を本格化させました。ドイツ国内を拠点としながら、積極的に国際的な演奏活動を展開していきます。これまでに、ドイツ国内の主要都市はもちろんのこと、ギリシャ、トルコ、ラトビアといった欧州各地、さらには豪華客船「MS EUROPA」のクルージング中に船上コンサートを行うなど、多岐にわたる場所でその音楽を披露してきました。

日本においても、彼らの音楽は紹介されました。2008年には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演に合わせて、東京の王子ホールで初のコンサートが実現しました。この記念すべき日本初演では、残念ながら初期メンバーのうちチェロとコントラバスの奏者に変更がありましたが、公演自体は日本の聴衆から温かく迎えられ、大成功のうちに幕を閉じました。

アウラータ・クインテットは、国際的なコンクールが生んだ特別な出会いと、そこで生まれた音楽への情熱を原動力に、世界各地でその「黄金の鱒」のごとき輝かしい響きを届け続けている室内合奏団です。彼らの活動は、才能ある演奏家たちがアンサンブルとして創造する音楽の可能性を示しています。

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