アオカビ

アオカビ（Penicillium）についての解説

アオカビは、一般的にペニシリウム属と呼ばれるカビの総称であり、地球上に広く分布しています。300種以上が知られており、これらは通常、青や緑、紫、オレンジ、灰白色、黄色、白色など多彩な色合いのコロニーを形成します。顕微鏡で観察すると、筆状の構造「筆状体」が見られ、その先端に胞子がついているのが特徴です。この特異な外見が、アオカビの学名の由来になっています。

このカビは、医学においてはペニシリンの発見で特に有名です。ペニシリンは1928年にアレクサンダー・フレミングによって初めて発見された抗生物質であり、アオカビから生産されます。また、ゴルゴンゾーラやロックフォールといったチーズの製造にも使用されており、これらの特定の種が独特の風味や香りをチーズに与えることに寄与しています。

分類

アオカビの分類は有性生殖を基準にしており、完全世代が未発見のカビは不完全菌として分類されます。アオカビは、無性生殖世代の形態的特徴から不完全菌の一部として扱われます。Penicillium属に含まれるカビの中には、完全世代が発見されると新しい分類群に振り分けられることがあります。

この属に属するカビの多くは、小さな球形の子実体を形成しますが、一部は大型のきのことしても知られています。有性生殖がまだ確認されていないものも多く存在し、リボソームRNAに基づく系統解析により子嚢菌の系統に属することが明らかになっています。

形態

アオカビの胞子は分生子と呼ばれ、分生子柄は基質の表面に短く立ち、先端で短い枝に分かれます。これらの枝は小さな角度を作りながら互いに寄り添い、先端から分生子の数珠を形成します。この構造は、筆や箒、松明のように見えます。アオカビのこの特性は、コウジカビにも似ており、完全世代でも類似性が確認されています。

他のカビとの類似性

肉眼で見分けると、コウジカビとの外見の類似性が際立ちますが、他の多くのカビは、食品に発生することは少ないです。形態的には近いPaecilomycesもあり、その分生子柄の形状はアオカビと似ていますが、胞子は無色でコロニーの見た目は白色となります。また、Gliocladiumも似たような分生子柄を持っていますが、胞子は粘液球の形状を示します。

人との関係

チーズ製造

アオカビの中には、各種のチーズを製造するために用いられるものもあります。特にブルーチーズはアオカビを内部に添加することで作られ、ゴルゴンゾーラやロックフォールなどが代表例です。また、カマンベールやブリーチーズもPenicillium属に属し、表面に特定のカビを生やしています。これらのカビはチーズの発酵や熟成過程中に独特の風味を添加します。

ペニシリンの発見

アオカビは、1928年にフレミングによって発見されたペニシリンの源泉として、医療分野においても重要です。彼はアオカビが混入した培養環境において細菌の生育が妨げられる現象を発見し、この発見が抗生物質の歴史を大きく変えることとなりました。ペニシリンはアオカビにとって、他の生物との競争を有利に進めるための戦略的な産物であると理解されています。

健康への影響

多くのアオカビは健康な人々に感染しない非病原性ですが、一部は日和見感染を起こすことがあり、例えばAIDS患者においてはP. marneffeiが感染を引き起こすことがあります。さらに、アレルギー性の肺炎である過敏性肺炎を発症させることがあります。アオカビは一般にはカビ毒を生産しないため、直接的な食中毒の原因とは考えにくいですが、他の有害なカビの繁殖の先触れになることがあります。

植物病

アオカビは植物にも影響を与え、特に「青かび病」という病気が知られています。ミカン青かび病などは、このカビによって引き起こされます。また、他にリンゴ青かび病やサツマイモ青かび病も存在し、米やトウモロコシなども感染の対象とされています。収穫後の米にこれらのカビが感染することで、黄変米と呼ばれる現象が生じることがあります。

アオカビはその多様な特性によって、食品生産から医療に至るまで、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。

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