アオサ

アオサ（石蓴）について

アオサは、アオサ類に属する緑藻の総称であり、一部の種は食用として「アオサノリ」とも呼ばれます。この海藻は、世界中の沿岸で広く見られ、その生態や利用法は多岐にわたります。

アオサ類とは

植物分類学におけるアオサ類は、狭義にはアオサ科アオサ属（Ulva）の海藻を指しますが、広義にはアオサ科またはアオサ目の海藻全体を指します。かつてアオノリとして分類されていたものも、DNA分析や形態学的研究により、現在ではアオサ属に統合されています。

アオサ属の海藻は、2層の細胞層からなる膜状の体をしており、一般的に鮮やかな緑色をしています。日本を含む世界各地の沿岸に普通に見られ、海岸に打ち上げられていることも多いです。特にミナミアオサは、窒素が多い海域で大量発生しやすく、海岸を覆い尽くすことで景観を損ねたり、腐敗して悪臭を放ったり、アサリを死なせたりするなどの被害を引き起こすこともあります。

アオサの生態

アオサは、潮の満ち引きがある浅い海の岩などに付着して生息・繁殖します。また、海水に浮遊した状態でも成長・繁殖することが可能です。生活環は同型世代交代型であり、胞子体、雄性配偶体、雌性配偶体の3種類の藻体が共存しますが、見た目での区別は困難です。

胞子体が成熟すると遊走子が放出され、これが有性配偶体に成長し、さらに配偶子を放出します。雌雄の配偶子は接合して胞子体になるのが一般的ですが、配偶子がそのまま同性の配偶体になる無性生殖の生活環を持つ種も存在します。成熟した個体は、遊走子や配偶子を放出した後に枯死します。

アオサの種

アオサ属の藻は形態に大きな個体差があり、種を特定するのが難しい場合があります。日本産の主な種としては、以下のようなものがあります。

ナガアオサ (Ulva arasakii)
タレツアオノリ (Ulva clathrata)
ヒラアオノリ (Ulva compressa)
ボタンアオサ (Ulva conglobata)
リボンアオサ (Ulva fasciata)
チシマアナアオサ (Ulva fenestrata)
キヌイトアオノリ (Ulva flexuosa)
ボウアオノリ (Ulva intestinalis)
オオバアオサ (Ulva lactuca)
ウスバアオノリ (Ulva linza)
ミナミアオサ (Ulva ohnoi)
アナアオサ (Ulva pertusa)
スジアオノリ (Ulva prolifera)
アミアオサ (Ulva reticulata)
アオサリカ (Ulva rigida)
コツブアオサ (Ulva spinulosa)
オオアオサ (Ulva sublittoralis)
ヒメボタンアオサ (Ulva tanneri)

以前はアオサ属に含まれていたヤブレグサ属のウシュクアオサとヤブレグサは、現在では別属に分類されています。また、アオノリ属のアオノリも、DNA分析の結果アオサ属に含められるようになりました。

なお、ヒトエグサはかつてアオサ目に分類されていましたが、現在はヒビミドロ目に分類されています。しかし、食用として「アオサ」と販売されているものには、ヒトエグサも多く含まれています。

緑潮（グリーンタイド）

海水中の栄養過多（富栄養化）が原因で、アオサが大量に繁殖することがあります。この現象を「緑潮」と呼びます。緑潮の原因となるアオサは、不稔性であることが多く、遊走子や配偶子を放出して枯死する通常の稔性アオサとは異なり、成長を続けるため大繁殖につながります。

緑潮は、漁網に絡まったり、海岸に打ち上げられたものが腐敗して悪臭を放ったり、底生生物を窒息させたりするなど、環境や経済に大きな被害をもたらします。しかし、アオサは成長が早く、海水中の栄養塩を効率よく吸収するため、海水浄化に役立つ一面も持っています。

緑潮の原因となるアオサは、アナアオサ型、アミアオサ型、リボンアオサ型、U. armoricana型の4つに分類されると考えられています。

大量に繁殖したアオサは、食料や飼料として活用する試みも行われていますが、多くは回収された後に焼却処分されています。

アオサの利用

アオサ類は、食品、飼料、水質浄化、バイオマスエネルギーなど、多岐にわたって利用されています。

食品

乾燥粉末は、ふりかけなどに利用されます。特にアナアオサが食用として用いられます。アオサはワカメや青のり同様、マグネシウムなどのミネラルが豊富な海藻食品です。

飼料

北海道では、ウニの養殖に不稔性のアオサが利用されています。また、大量発生したアオサを回収し、飼料や堆肥として活用する試みも各地で行われています。このような海藻の飼肥料化は「マリンサイレージ」と呼ばれます。

エネルギー

アオサを発酵させてメタンガスを生成し、バイオマスエネルギーとして利用する研究も進められています。しかし、コスト面などの課題から、実用化には至っていません。

加工食品

アオサは、乾燥させたものが「あおさ」として市販されており、料理の風味付けなどに利用されます。以前は、アオサは食感や風味がアオノリに劣るとされていましたが、近年ではアオノリの代用として広く使われるようになりました。アオサの養殖も行われており、安定的な供給が目指されています。

マルコメはヒトエグサの陸上養殖試験設備を設立し、2024年9月に陸上養殖あおさの出荷を予定しています。

まとめ

アオサは、食用だけでなく環境浄化やエネルギー資源としても注目される海藻です。その多様な側面を理解し、持続可能な社会の実現に役立てていくことが期待されます。

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