アカイナケファルス

アカイナケファルスとは

アカイナケファルス（Akainacephalus johnsoni）は、後期白亜紀（カンパニアン期、約7597万年前）の北米、現在のユタ州に生息していたアンキロサウルス科の恐竜です。属名は古代ギリシャ語で「トゲのある頭」を意味し、その名の通り、頭部には特徴的なトゲ状の装甲が発達していました。カイパロウィッツ層で発見されたこの恐竜は、ララミディア大陸南部に生息していた鎧竜としては最も完全な標本の一つとして知られています。

発見と命名

アカイナケファルスの化石は、2008年にユタ州のグランド・ステアーケース・エスカランテ国立記念公園で発見されました。化石の発掘は2009年に完了し、その後、ランディー・ジョンソンによって頭骨のクリーニング作業が無償で行われました。この頭骨は詳細なCATスキャン解析にかけられ、2018年に古生物学者によって新属新種として記載・命名されました。種小名は、クリーニング作業を行ったジョンソンへの献名です。

ホロタイプ標本（UMNH VP 20202）は、頭骨、下顎骨、胴椎、仙椎、尾椎、肋骨、肩甲骨、烏口骨、上腕骨、尺骨、腸骨、大腿骨、脛骨、中足骨、趾骨、末節骨、頸椎ハーフリング、そして多数のオステオダーム（皮骨）から構成されており、全身骨格の約45%を占めています。これらの標本は、ユタ州立自然史博物館に所蔵されています。

形態的特徴

アカイナケファルスは、アンキロサウルス類に共通する全身を覆う装甲を持っていましたが、特に頭部の装甲が特徴的でした。眼窩上縁には重厚な隆起があり、前頭骨と鼻骨は密集した円錐形のcaputegulae（小さな骨質のコブ）で覆われていました。また、頬角は三角形でほぼ垂直に下を向いていました。

アカイナケファルスの頭部装甲は、同じくララミディア大陸南部に生息していたノドケファロサウルスに酷似していましたが、いくつかの相違点も存在しました。例えば、アカイナケファルスでは、前後の上眼窩の皮骨が単一の後ろ向きの高構造を形成しているのに対し、ノドケファロサウルスでは、これらの皮骨が独立した要素のままでした。また、頬角の形状にも違いが見られました。

系統解析

系統解析の結果、アカイナケファルスはノドケファロサウルスと単系統群を形成し、アジアのアンキロサウルス類との近縁性が高いことが示唆されました。このことは、ララミディア大陸におけるアンキロサウルス類の個体群に地方性が存在していた可能性を示唆しています。さらに、アカイナケファルスの発見は、ベーリング地峡を介したアジアと北米間の動物相の遷移が、少なくとも2回発生した可能性を示唆しています。

古環境

アカイナケファルスが生息していたカイパロウィッツ層は、当時の北米を東西に分断していた西部内陸海路の西岸近くに位置していました。この地域は、大きな水路と湿地帯の沼沢河川が支配する古代の氾濫原であり、湿潤で温暖な気候のもと、多様な生物が生息していました。

アカイナケファルスは、ドロマエオサウルス類、トロオドン類、ティラノサウルス類、ハドロサウルス類、ケラトプス類、オヴィラプトル類など、多様な恐竜たちと生息地を共有していました。また、軟骨魚類、サンショウウオ、カエル、カメ、トカゲ、ワニ、哺乳類など、多様な脊椎動物もこの地域に生息していました。

アカイナケファルスの化石は、当時の生態系を理解する上で貴重な情報を提供してくれます。

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