アンキロサウルス

アンキロサウルス：鎧をまとった植物食恐竜

アンキロサウルス（学名: Ankylosaurus）は、約6800万年前から6600万年前の白亜紀後期に、現在の北アメリカ大陸に生息していた植物食恐竜です。鳥盤目に属し、その中でも曲竜下目、アンキロサウルス科に分類されます。名前は「連結したトカゲ」を意味し、その名の通り、全身を覆う装甲が特徴的です。

形態

アンキロサウルスの体長は5.5メートルから最大で10.7メートルに達し、体重は約4.5トンから7トンと推定されています。その外見は、まるで戦車のように頑丈な装甲で覆われており、さらに尾の先には大きな骨塊がついています。

この装甲は、楕円形の骨板と骨質のスパイクで構成されており、まぶたにまで及ぶ徹底ぶりです。最大の武器である尾は、基部が柔軟に動く一方、先端付近は骨質の腱で補強され、骨塊へと繋がっています。この尾をハンマーのように左右に振り回すことで、当時の獣脚類、特にティラノサウルスのような天敵から身を守っていたと考えられています。装甲は皮膚から発達したもので、骨質化しているため化石として良好な状態で残ることが多いです。

敵がアンキロサウルスを攻撃する際、唯一の弱点は腹部でした。しかし、頑丈な装甲に加え、重心の位置や数トンにも及ぶ体重のため、腹部への攻撃は非常に困難でした。

頭骨は幅広く、後頭部と頬には2対のスパイクを備えています。双弓類の特徴である眼窩後部の側頭窓は失われ、前眼窩孔もありません。吻（ふん）は大きく丸みを帯びていますが、これは鼻道がS字型に湾曲しているためです。この大きな鼻腔は、吸い込んだ空気の加湿や濾過の役割を果たしていたと考えられています。

吻端には歯がなく、角質の嘴に置き換わっていました。残った歯列も非常に貧弱で、咀嚼には適していません。そのため、アンキロサウルスは嘴で千切り取った植物を丸呑みし、体内で発酵させて栄養を吸収していたと推定されています。胴体は幅広く樽状で、四肢は短く頑丈ですが、前肢よりも後肢の方が長いです。

装甲化

同じように体を装甲化している恐竜として、ノドサウルスが挙げられます。しかし、ノドサウルス類の装甲が内部まで密な重装甲であるのに対し、アンキロサウルス類の装甲は内部が空洞でより軽く、運動性に優れていました。防御を最小限に抑え、尾のハンマーを積極的に使うことで身を守っていたと考えられています。

アンキロサウルス科の恐竜としては、エウオプロケファルスに関する研究が進んでいます。全身骨格が少ないアンキロサウルスの研究においては、別の種の知見が参考にされることもあります。

アンキロサウルスは、その独特な装甲と尾のハンマーによって、白亜紀後期の過酷な環境を生き抜いた、非常に興味深い恐竜です。

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