アンドレア・サッキ

アンドレア・サッキ（1599年11月30日 - 1661年6月21日）は、バロック時代にローマで活躍したイタリアの画家です。その作品は、古典主義的な傾向を示すことで知られています。

生涯

サッキは、ローマの画家を父として生まれました。初期にはジュゼッペ・チェーザリ、後にフランチェスコ・アルバーニの工房で絵画の修行を積みました。1621年にローマに戻ってからは、ラファエロやポリドーロ・ダ・カラヴァッジオといった巨匠たちの作品を研究し、独自のスタイルを確立していきました。また、アレッサンドロ・アルガルディやフランソワ・デュケノアといった彫刻家たちとの交流も、彼の芸術に影響を与えたと考えられています。

サッキは、枢機卿バルベリーニの庇護を受け、パラッツォ・バルベリーニに代表作の一つである「神の知恵」（Divine Wisdom, 1629–33）を描きました。この作品は、彼の古典主義的な作風をよく表しており、後の世代にも大きな影響を与えました。

バロック美術との対立

サッキは、同時代のバロック画家であるピエトロ・ダ・コルトーナやジャン・ロレンツォ・ベルニーニと並び称される存在でしたが、その芸術観は大きく異なりました。彼は、アカデミア・ディ・サン・ルカにおいて、ダ・コルトーナと激しい論争を繰り広げ、「古典主義」の立場を擁護しました。サッキは、バロックの装飾過多な表現を批判し、より簡潔で調和のとれた画面構成を追求しました。彼の作品は、バロックのダイナミズムとは対照的に、静謐で抑制の効いた雰囲気を醸し出しています。

作品の特徴と影響

サッキの作品は、古典古代の芸術を模範とし、人物の配置や構図に緻密な計算が施されているのが特徴です。また、色彩は抑制され、明暗のコントラストを強調することで、画面に深みを与えています。彼の代表作としては、「神の知恵」の他に、「聖ロムアルドの幻視」などが挙げられます。これらの作品は、彼の古典主義的な作風をよく示しており、後の世代の画家に大きな影響を与えました。

サッキの弟子には、カルロ・マラッタなどがおり、彼の古典主義的な精神は、後のローマ派の画家たちに受け継がれていきました。また、彼の作品は、18世紀の新古典主義の画家たちにも影響を与え、美術史における重要な位置を占めています。

作品リスト(一部)

「神の知恵」
「聖ロムアルドの幻視」

参考文献

Antonio d’Avossa: Antonio Sacchi. Edizione Kappa, Rom 1985
Jacob Burckhardt: Der Cicerone. Eine Anleitung zum Genuß der Kunstwerke Italiens. Kröner, Stuttgart 1986, ISBN 3-520-13404-7
Ann S. Harris: Andrea Sacchi. Complete edition of the paintings with a critical catalogue. Phaidon Press, Oxford 1978, ISBN 0-7148-1527-6
Hans Posse: Der römische Maler Andrea Sacchi. Ein Beitrag zur Geschichte der klassizistischen Bewegung im Barock. Seemann, Leipzig 1925
* Roberta Rinaldi (Hrsg.): Antonio Sacchi (1599–1661). De Luca, Rom 1999, ISBN 88-8016-329-9

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