アカントフォリス

アカントフォリス：棘を持つ白亜紀の装甲恐竜

アカントフォリス（Acanthopholis）は、白亜紀前期（約1億4500万～1億年前）のヨーロッパに生息していた、ノドサウルス科に属する曲竜類です。その名前は古代ギリシャ語で「棘のある鱗」を意味し、体を覆う特徴的な装甲に由来します。

発見と命名の歴史

アカントフォリスの化石は、1865年頃にイギリスのケント州フォークストン近郊で発見されました。化石収集家のジョン・グリフィスが発見した皮骨を含む化石を冶金学者のジョン・パーシーに売却。その後、古生物学者のトマス・ヘンリー・ハクスリーがこの化石に注目し、グリフィスに同じ場所での発掘を依頼しました。潮間帯という困難な環境下での発掘作業の結果、追加の骨や装甲が発見されました。

1867年、ハクスリーはこれらの化石に基づいて、新属新種として Acanthopholis horridus を記載・命名しました。属名は装甲にちなみ、「棘」を意味するギリシャ語の akantha と「鱗」を意味する pholis に由来します。種小名の horridus はラテン語で「驚くべき」または「荒っぽい」を意味します。

タイプ標本は、ケンブリッジ・グリーンサンド累層から発見された、3つの歯、頭蓋底の一部、胴椎、そして複数の棘と鱗甲で構成されています。この累層はアルブ期からセノマン期のものですが、より古い時代の再堆積化石も含まれています。

種の追加と再評価

その後、ハリー・シーリーによって複数の種が追加されましたが、1999年の再評価によって、これらの種は全て疑問名とされました。これは、これらの種がノドサウルス科に属すること以上の識別ができない、断片的で関節状態にない標本に基づいているためです。中には、そもそも曲竜類のものであるかどうかも疑わしいものも存在します。

シーリーが博物館の標本ラベルとして使用したものの、発表しなかった種（"Acanthopholis hughesii" と "Acanthopholis keepingi"）も発見されましたが、これらは裸名とされています。

特徴

アカントフォリスは、楕円形でキール状のプレートと、首から肩にかけて突き出した長い棘からなる装甲を持っていました。これらの装甲は皮膚にほぼ水平に配置されていたと考えられています。体長は3～5.5メートル、体重は約380キログラムと推定されており、四足歩行の草食動物でした。

分類

アカントフォリスは、当初ハクスリーによってスケリドサウルス科に分類されましたが、後にノプシャによって独自の科であるアカントフォリス科に分類されました。現在では、曲竜類内のノドサウルス科に属すると考えられています。

まとめ

アカントフォリスは、その断片的な化石記録と分類の変遷から、未だ多くの謎に包まれた恐竜です。今後の研究によって、その生態や進化上の位置づけがより明確になることが期待されます。

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