アキュラ・ARX-01

アキュラ・ARX-01：アメリカン・ルマン・シリーズを席巻した名車

アキュラ・ARX-01は、ホンダが北米市場におけるブランドイメージ向上とモータースポーツ活動拡大のため、2007年からアメリカン・ルマン・シリーズ（ALMS）のLMP2クラスに投入したスポーツプロトタイプカーです。1991年から1993年以来、実に14年ぶりのアキュラブランドによる本格的なレース参戦となりました。

このマシンは、フランスのクラージュ・コンペティションが製造したクラージュ・LC75をベースに、ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント（HPD）とイギリスのワース・リサーチが共同で開発しました。モノコックとギアボックスを除く大部分が改良されており、特に空力性能の向上に重点が置かれていました。

パワープラントには、HPDが独自開発したV8型3.4L自然吸気エンジンを搭載。元々はインディ・レーシング・リーグ(IRL)用として開発されたエンジンでしたが、IRLがホンダのワンメイクレースとなったため、スポーツカーレースへの転用が決定されました。これは、日本の本田技術研究所以外で開発された初めてのレーシングエンジンという点でも注目に値します。

2007年シーズン、ARX-01aとしてデビューしたマシンは、アンドレッティ・グリーン・レーシングとハイクロフト・レーシングの2チームに供給され、開幕戦セブリング12時間レースではアンドレッティ・グリーン・レーシングがLMP2クラス優勝（総合3位）を飾るという好スタートを切りました。ロングビーチでは、LMP1クラスのアウディR10 TDIを抑えてポールポジションを獲得するなど、その戦闘力の高さを示しました。

2008年シーズンには、ARX-01aをベースに改良を加えたARX-01bが登場。ロウズ・フェルナンデス・レーシングとド・フェラン・モータースポーツが参戦に加わり、4チーム体制でレースに挑みました。このシーズン、ハイクロフト・レーシングがロングビーチで優勝、ライムロック・パークではアキュラにとってALMS初優勝をもたらしました。さらに、ベルアイルではアンドレッティ・グリーン・レーシングが総合優勝を達成し、アキュラ勢が表彰台を独占する快挙を成し遂げました。

2009年シーズンは、アンドレッティ・グリーン・レーシングが撤退し、ド・フェラン・モータースポーツとハイクロフト・レーシングがLMP1クラスへ移行したため、ロウズ・フェルナンデス・レーシングのみがARX-01bでLMP2クラスに参戦しました。この状況を有利に活かし、連勝を重ね、最終的にドライバーズタイトル、そしてエンジン／シャシー両部門のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。アキュラブランドとしてのワークス活動は、このシーズンをもって終了しました。

2010年シーズンからは、HPD名義で活動が継続され、ALMSだけでなく、LMSシリーズやル・マン24時間レースにもARX-01bをベースとしたHPD ARX-01cが供給されました。ハイクロフト・レーシング（ALMS）とストラッカ・レーシング（ル・マン24時間レースとLMSシリーズ）がARX-01cを使用し、それぞれで素晴らしい結果を残しました。ハイクロフト・レーシングはALMSで総合優勝を果たし、ストラッカ・レーシングはル・マン24時間レースでLMP2クラス優勝（総合5位）を達成しました。

2011年には、レギュレーション変更に対応したHPD ARX-01d、ARX-01eが開発され、複数のチームに供給されました。しかし、ハイクロフト・レーシングはシーズン途中でホンダとのパートナーシップを解消。他チームはル・マン24時間レースやALMS、LMSシリーズに参戦し、一定の成績を残しましたが、アキュラ・ARX-01の系譜は、その後継車へと引き継がれていきました。アキュラ・ARX-01は、アキュラ、そしてHPDのモータースポーツにおける重要な転換期を象徴するマシンとして、その名を歴史に刻みました。

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