アクシオコス

プラトン偽書『アクシオコス』：死を前にした問答

『アクシオコス』（希: Ἀξίοχος, 羅: Axiochus）は、プラトン名義で伝えられる短い対話篇です。しかし、これは偽書であると古代より広く認識されています。副題は「死について」であり、死を目前にした人物の心情と、それに対する哲学的な慰めがテーマとなっています。

古代の評価と位置づけ

この作品は、古代のプラトン研究者たちによって偽書と断定されました。例えば、ディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』には、プラトン著作として疑わしいとされた11篇の作品が挙げられており、『アクシオコス』もその中に含まれています。また、古代に編纂されたと考えられるプラトンの著作集、テトラロギアにも収録されていません。これらの事実は、『アクシオコス』がプラトンの作品ではないことを強く示唆しています。

登場人物と場面設定

対話篇には、3人の登場人物が登場します。

ソクラテス: プラトンの著作に多く登場する哲学者。ここでは65歳頃とされています。
アクシオコス: アルキビアデスの息子であり、アルキビアデスの叔父にあたる人物。56歳頃で、死を目前にしています。
* クレイニアス: アクシオコスの息子。プラトンの別の対話篇『エウテュデモス』にも登場する人物。17歳頃と推定されます。

物語は、紀元前404年頃のアテナイを舞台にしています。ソクラテスがキュノサルゲスへ向かう途中、クレイニアスに呼び止められます。クレイニアスは、死を目前に苦しむ父アクシオコスを慰めてほしいとソクラテスに懇願します。そして、ソクラテス、アクシオコス、クレイニアス、そして音楽家ダモンやカルミデスといった人々が集まり、死についての議論が始まります。

「死」についての問答

対話篇の中心は、ソクラテスとアクシオコスによる「死」についての議論です。アクシオコスは死への恐怖と不安を訴えますが、ソクラテスは哲学的な観点から死の意義や、死後の世界について考察します。ソクラテスの言葉は、アクシオコスの不安を和らげるための慰めであり、同時に、死生観についての深い洞察を示唆しています。この議論を通して、読者は死という普遍的なテーマについて深く考えさせられます。

作品の特徴と解釈

『アクシオコス』は、プラトンの他の作品と比較して、その文体や哲学的な深さに違いが見られます。一部の学者は、この作品がプラトンの弟子や後世の人物によって書かれた可能性を指摘しています。しかし、その簡潔な構成と、死をテーマにした深い内容から、哲学的な考察の対象として、現在でも高い価値を保っています。

この対話篇は、プラトンの他の作品とは異なる、独特の雰囲気を持っています。偽書であるという事実を含めて、この作品が持つ文学的・哲学的な意味を理解することは、プラトン哲学全体を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。 プラトン研究においては、真作か偽作かの判断だけでなく、その作品が持つ独自性や歴史的背景を考慮することが重要です。この『アクシオコス』は、まさにそのような検討を促す作品と言えます。日本語訳も存在するため、原文にアクセスできない方でも内容を理解することができます。

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