アクスム・サーサーン戦争

アクスム・サーサーン戦争

アクスム・サーサーン戦争は、6世紀にアクスム王国とサーサーン朝の間で勃発した戦争です。両国は南アラビアの支配権を巡って激しく争い、その結果は両国の勢力図だけでなく、その後の歴史にも大きな影響を与えました。

概要

この戦争は、アクスム王国が南アラビアに侵攻し、ヒムヤル王国を併合したことから始まりました。しかし、ヒムヤル王国の残党勢力がサーサーン朝に支援を求め、サーサーン朝がこれに応じて軍事介入したことで、事態はより複雑化しました。戦争の結果、サーサーン朝はイエメンを支配下に置き、交易ルートを掌握しましたが、アクスム王国も再征服を試みるなど、緊張状態が続きました。

背景

アクスム王国の南アラビア侵攻

520年代、アクスム王国の国王カレブは、南アラビアに侵攻し、ナジュラーンのキリスト教徒共同体を迫害していたズー・ヌワースを廃位しました。これにより、ヒムヤル王国はアクスム王国の支配下に入りました。しかし、この支配は長くは続きませんでした。

ヒムヤル王国の残党の反抗

アクスム王国の支配に対し、ヒムヤル王国の残党勢力は反抗を試みました。サイフ・イブン・ズィー・ヤザンは、東ローマ帝国に軍事援助を求めましたが拒否され、代わりにサーサーン朝に支援を要請しました。

サーサーン朝の介入

サーサーン朝の第一次侵攻

サーサーン朝のホスロー1世は、サイフ・イブン・ズィー・ヤザンの要請に応じ、将軍ワフリーズを派遣してアクスム王国と戦わせました。サーサーン朝軍はハドラマウトの戦いやサナア包囲戦で勝利し、アラビア半島からアクスム王国の勢力を駆逐しました。サイフ・イブン・ズィー・ヤザンはイエメンの共同統治者として任命されましたが、後に暗殺され、アクスム王国が再征服に乗り出す事態となりました。

アクスム勢力の復権とサーサーン朝の第二次侵攻

サイフ・イブン・ズィー・ヤザンの死後、アクスム王国は再びアラビア半島に侵攻し、勢力を回復しようとしました。これに対し、サーサーン朝は再び軍を派遣し、イエメンを再征服しました。以降、アクスム王国の勢力がアフリカ外に伸長することはなく、イエメンはサーサーン朝の支配下に置かれることになりました。

戦争の影響

アクスム・サーサーン戦争は、南アラビアの勢力図を大きく塗り替えました。サーサーン朝はイエメンを支配下に置き、交易ルートを掌握しましたが、その支配は長くは続きませんでした。7世紀初頭にはイスラム教が興り、アラビア半島は新たな時代を迎えることになります。

また、この戦争の影響で、アル・アブナーと呼ばれる共同体が出現しました。サーサーン朝の兵士が地元のアラブ人女性と結婚することが多く、イラン人とアラブ人の両方の血統を引き継ぐ人々で構成された共同体です。彼らは、ごく初期のイスラム教徒としてイスラム教の拡大にも貢献しました。

関連項目

アル・アブナー
サーサーン朝
アクスム王国

参考資料

(参考文献の情報)

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