アクリル酸エチル

アクリル酸エチル：特性、用途、安全性

アクリル酸エチルは、アクリル酸のエステルに分類される有機化合物です。無色で、特徴的な刺激臭を持ちます。その化学式はCH₂=CHCO₂CH₂CH₃で表されます。塗料、繊維、不織布といった様々な工業製品の製造に用いられるほか、医薬品の中間体合成にも重要な役割を果たしています。

製造方法

アクリル酸エチルは、一般的にアクリル酸とエタノールを酸触媒下で反応させるエステル化によって製造されます。アクリル酸そのものは、プロピレンの酸化によって得られるほか、アセチレン、一酸化炭素、エタノールを用いたレッペ反応によっても合成できます。市販品には、重合を抑制するためのヒドロキノンなどの安定剤が添加されている場合が多いです。

反応と用途

アクリル酸エチルは、多様なポリマーの原料として広く利用されています。樹脂、プラスチック、ゴム、さらには義歯材料といった様々な製品の製造に貢献しています。また、エステル交換反応により、様々なアクリル酸アルキル（アクリル酸エステル）を合成することができ、用途に合わせた特性を持つ特殊なアクリル酸エステルを製造する際に役立っています。例えば、アクリル酸2-エチルヘキシルは感圧接着剤に、アクリル酸シクロヘキシルは自動車用クリアラッカーに用いられるなど、その用途は多岐に渡ります。

さらに、アクリル酸エチルはホモポリマーや、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルなど、様々なモノマーとのコポリマーの製造にも使用されます。エチレンとのコポリマーは接着剤やポリマー添加剤として、アクリル酸とのコポリマーは液体洗剤の洗浄効果向上に役立ちます。メタクリル酸とのコポリマーは、医薬品における錠剤コーティング剤として利用されています。これらのコポリマーやターポリマー（3種類のモノマーからなるポリマー）は、塗料、接着剤、紙、繊維、皮革処理剤、化粧品、医薬品など、実に様々な分野で活用されています。

アクリル酸エチルは、マイケル付加反応などにも利用されます。アミンと反応させることでβ-アラニン誘導体を高収率で得ることができ、医薬品中間体の合成において重要な役割を担っています。α,β-不飽和カルボニル化合物としての性質を利用した求核付加反応も医薬品合成において重要な戦略となっています。

天然における存在

アクリル酸エチルは、パイナップルやブルーチーズなど、一部の食品にも微量に含まれていることが確認されています。また、バニラの香り成分としても知られていますが、高濃度ではバニラの香りに悪影響を与えるため、注意が必要です。

安全性

[国際がん研究機関]は、[アクリル酸]]エチルを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」物質(グループ2B)に分類しています。米国環境保護庁(EPA)や米国国家毒性プログラム]も、動物実験において発がん性に関する懸念を示唆する結果を発表していましたが、ヒトの[[前胃には該当する器官がないことから、その後の評価ではヒトへの発がん性リスクは低減されていると判断されています。

アクリル酸エチルは、大量摂取した場合には毒性を示すことが知られています。しかしながら、臭気しきい値が非常に低いため、悪臭によって危険性を感知することができます。臭いの存在は、健康被害が生じる濃度レベルに達するずっと前にアクリル酸エチルの存在を知らせる警告となります。ただし、作業環境における長期的な曝露については、適切な安全対策が必要です。食品添加物としての使用は、2018年10月時点でFDAにより承認が取り下げられています。

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