アグラヴェイン

アグラヴェイン卿について

アグラヴェイン卿（Agravain）は、アーサー王物語に登場する円卓の騎士の一人で、オークニーのロット王の息子であり、ガウェイン卿の弟です。また、アーサー王の甥でもあります。彼のキャラクターは様々な文学作品に描かれており、時には悪役として、時には英雄的存在として描かれています。

異なる描写と冒険

アグラヴェイン卿は円卓の騎士として活躍しますが、彼自身を主人公とした冒険は特に存在しません。ただし、彼は物語の終盤においてランスロット卿の失脚を狙う重要な役割を担っています。彼は、兄のガウェイン卿やガヘリス卿、ガレス卿、そして異父弟のモルドレッド卿とともに、ランスロット卿とグィネヴィア王妃の不義密通の証拠を探そうと提案します。しかし、この提案に同意したのはモルドレッド卿のみで、最終的には彼らはランスロット卿の密会現場を押さえることに成功しますが、ランスロット卿に阻まれ、アグラヴェイン卿は命を落とします。

アグラヴェイン卿はしばしば悪役として描かれ、特にマロリーによるアーサー王の物語においては、その性格が卑しいとされ、「邪悪な騎士」としての評価も受けることがあります。このような評価は、彼が王国の崩壊の原因の一端を担っているとの記述にまで及びます。しかし、彼が殺害された際、兄弟であるガウェイン卿の反応は薄く、特に嘆く様子は見られませんでした。このことは、アグラヴェイン卿が兄弟からもあまり良い印象を持たれていなかったことを示唆しています。

初期の作品におけるアグラヴェイン

一方で、アーサー王伝説が形成された初期の段階では、アグラヴェイン卿の描写にはそれほど悪い面は見られません。例えば、『ガウェイン卿と緑の騎士』では「堅い手のアグラヴェイン」と呼ばれ、名誉ある騎士として描かれています。この作品では、彼の強さと誠実さが称賛され、物語の中で重要な役割を果たしています。

家族との関係

アグラヴェイン卿の物語の中で特に注目されるのは、弟のガヘリスとの一方的な対立です。ガヘリスはある時、マーリンの指示に従い、兄のガウェインを救うために行動しますが、アグラヴェインは彼に嫉妬し、自らも同じことを成し遂げられると主張します。彼の嫉妬心は深く、最終的には兄を殺すことで自らの立場を証明しようとします。

このような対立の中、ガウェインは母を殺したガヘリスに復讐を誓いますが、アグラヴェインの陰謀により、兄弟間の関係はさらに複雑になります。特に、アグラヴェインがガウェインの名前を傷つけないように考え、ガヘリスを殺すことを反対した時の出来事は、彼のキャラクターに重要な影響を与えます。

人物像とグィネヴィア

アグラヴェイン卿は、グィネヴィアに対する思慕を抱いていましたが、彼女がランスロット卿と密通していることを知ると、その感情は敵対へと変わります。グィネヴィアは彼にとって、意地悪で気難しい母親とは異なる、優れた存在であったため、この裏切り行為は彼にとって大きな痛手となりました。アグラヴェイン卿の物語は、彼の複雑な性格と人間関係を浮き彫りにし、アーサー王伝説の中で重要な要素となっています。

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