アグリッピナ (ヘンデル)

ヘンデルの傑作オペラ『アグリッピナ』

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲の3幕からなるオペラ・セリア『アグリッピナ』（HWV 6）は、枢機卿ヴィンチェンツォ・グリマーニによる台本で、1709年から1710年のヴェネツィアのカーニバル・シーズンに向けて作曲されました。この作品は、ローマ皇帝クラウディウスの皇后アグリッピナが、息子ネロを帝位に就けるために繰り広げる陰謀を描いた物語です。

作品の背景と特徴

グリマーニの台本は、ヘンデルのオペラ作品の中でも最高傑作の一つと評価されています。反英雄的な風刺喜劇であり、当時の政治や社会情勢を反映した内容が盛り込まれているのが特徴です。教皇クレメンス11世を風刺しているという説もあります。

ヘンデルが3年間のイタリア滞在の終わりに作曲したこのオペラは、1709年12月26日にヴェネツィアのサン・ジョヴァンニ・グリソストモ劇場で初演され、観客から熱狂的な支持を受けました。初演から27回連続で上演されるという異例の成功を収め、多くの批評家から称賛されました。

音楽面では、既存の作品からの引用や借用も多く見られますが、全体として高い評価を受けています。

近年の再評価

初演後も時折再演されていましたが、18世紀半ばにヘンデルのオペラが流行から外れると、『アグリッピナ』も忘れ去られていきました。しかし、20世紀に入り、ドイツでヘンデルのオペラが復活すると、イギリスやアメリカでも初演されるようになり、再び注目を集めました。近年では、革新的な演出による上演も行われ、2007年にはニューヨーク・シティー・オペラやロンドン・コロシアムで上演され、人気を博しました。

現代の批評家は、『アグリッピナ』を「新鮮さと音楽的な創意に富み、ヘンデルのオペラにおける最初の傑作であり、ヘンデル・リバイバルの中で最も人気のあるオペラの一つ」と評価しています。

あらすじ

物語は、皇妃アグリッピナが、クラウディウス帝の死を偽って息子ネロを帝位に就けようとするところから始まります。しかし、クラウディウスは生きており、オットーネという軍人に命を救われます。クラウディウスはオットーネに帝位を授けようとしますが、アグリッピナは様々な策略を巡らせ、最終的にネロを帝位に就けることに成功します。

主な登場人物

アグリッピナ: ローマ皇帝クラウディウスの妻。野心家で、息子ネロを帝位に就けるために手段を選ばない。
ネローネ（ネロ）: アグリッピナの息子。後にローマ皇帝となる。
クラウディオ（クラウディウス）: ローマ皇帝。
オットーネ（オト）: 軍人。クラウディウスの命の恩人。
* ポッペア: オットーネの恋人。美貌の持ち主で、クラウディウスやネロからも愛される。

音楽

『アグリッピナ』には、数々の美しいアリアや重唱が含まれています。特に、アグリッピナのアリア「Pensieri, voi mi tormentate」や、ポッペアのアリア「Bel piacere è godere fido amore」などが有名です。

まとめ

『アグリッピナ』は、ヘンデルの才能が遺憾なく発揮された傑作オペラです。陰謀、愛憎、裏切りが渦巻くドラマティックなストーリーと、美しい音楽が観客を魅了します。ヘンデルのオペラを初めて鑑賞する方にもおすすめの作品です。

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