アグーチ

アグーチ

アグーチ（学名: Dasyprocta）は、齧歯目アグーチ科に属する動物の総称です。中央アメリカ、南アメリカ北部、小アンティル諸島に分布し、西インド諸島にも帰化種が存在します。モルモットによく似ていますが、それよりも大きく、足が長いのが特徴です。

特徴

アグーチの体色は種によって異なり、褐色、赤みがかった色、鈍いオレンジ色、灰色がかった色、黒っぽい色など様々です。しかし、一般的に腹面は背面よりも明るい色をしています。体表は粗い体毛で覆われており、危険を感じると逆立てる習性があります。

体長は40.5〜76cm、体重は2.4〜6kg程度で、尾は短く、毛が生えていません。足の指は前肢に5本、後肢に3本あり、第1指は非常に小さいです。大臼歯は円筒形で、噛み合わせ面にはエナメル質のひだがあります。

生態

アグーチは森林や林地、サバンナ、耕作地などに生息しています。昼行性または夜行性で、人里離れた場所では昼行性、外敵が多い場所では夜行性になる傾向があります。夜は木の洞や根の間に掘った巣穴に身を隠します。

動きは活発で、走りも得意です。水辺にもよく現れ、泳ぎも上手です。摂食時には後肢で立ち上がり、前肢で食物を持って食べます。多い時には100頭程度の群れを形成することもあります。

食性は主に植物食で、落ちた果実、葉、根などを食べます。時には木に登って未熟な果実を食べることもあります。また、食物を穴に埋めて蓄える習性があり、食料が少ない時期に備えます。食料が不足すると、地上で営巣する鳥の卵や貝を食べることもあります。サトウキビやバナナのプランテーションに現れて食害することがあり、害獣として扱われることもあります。

アグーチは、強く鋭い歯を使って非常に硬いブラジルナッツの果皮を開けることができます。この能力を持つ動物は他にほとんどいません。ブラジルナッツはアグーチの種子散布に依存しています。

繁殖

妊娠期間は約3ヶ月で、一度に2〜4頭の子を産みます。繁殖期は種によって異なり、年に2回決まった時期に繁殖するものもいれば、一年中繁殖可能なものもいます。幼獣は、葉や根、親の体毛を敷いた巣穴で産み落とされ、生まれた時からかなり成長しており、生後1時間で授乳を受けることもあります。一度つがいになると、その関係は一生続きます。寿命は20年程度で、齧歯類としては非常に長いです。

人間との関係

アグーチは地域によっては食用とされています。また、ペットとして飼育されることもあります。しかし、農作物への被害をもたらすことから、害獣として扱われることもあります。

その他

メキシコではセレケ（sereque）、パナマではニェケ（ñeque）、エクアドル東部ではグァツーサ（guatusa）と呼ばれています。
日本語では、明治期の博物学教本『具氏博物学』の中で、金兎という漢字が当てられています。

アグーチは、中南米の生態系において重要な役割を果たしている動物です。

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