アゴスティーノ・ステッファーニ

アゴスティーノ・ステッファーニ：多才な音楽家、外交官、そして聖職者

アゴスティーノ・ステッファーニ（1653年7月25日 - 1728年2月12日）は、イタリア出身のバロック音楽の作曲家であり、オルガン奏者、外交官、そしてカトリックの聖職者という、多岐にわたる顔を持っていました。彼は主にバイエルンを中心としたドイツで活動し、その音楽は当時の音楽界に大きな影響を与えました。

生涯

幼少期と音楽の道へ

ステッファーニは幼い頃、ヴェネツィアの聖マルコ大寺院の少年聖歌隊員として音楽の基礎を築きました。彼の才能はすぐに認められ、1667年にはタッテンバハ伯爵によってミュンヘンに連れて行かれました。そこでバイエルン選帝侯フェルディナント・マリアから奨学金を得て学業を修め、バイエルン宮廷楽団の一員として音楽家としてのキャリアをスタートさせました。

ヨハン・カスパール・ケルルのもとで音楽の研鑽を積んだ後、1673年にはローマに留学し、エルコレ・ベルナベイに師事しました。この留学中に6つのモテットを完成させ、その手稿譜は現在、ケンブリッジのフィッツウィリアム博物館に所蔵されています。

宮廷音楽家、そして聖職者として

1674年にミュンヘンに戻ったステッファーニは、最初の作品《Psalmodia vespertina》を出版しました。この作品は、後にマルティーニ師の『対位法教程 Saggio dl contrapunto』にも部分的に転載されています。1675年には宮廷オルガニストに任命され、その後司祭に叙階され、レプシング大修道院長の称号を得ました。聖職者としての地位を得たにもかかわらず、彼は劇場音楽への関心を失うことはありませんでした。

オペラ作曲家としての成功

ステッファーニは生涯にわたり劇場のための音楽を作曲し続けました。1681年には、最初の歌劇《マルクス・アウレリウス帝 Marco Aurelio》をミュンヘンで上演し、成功を収めました。その後も、《ソロン Solone》、《厚かましさと敬意 Audacia e rispetto》、《恋の特権 Prerogative d'amore》、《ローマ王セルウィウス・トゥリウス Servio Tullio》、《アラリック Alarico》、《ニオベ Niobe》などのオペラを次々と発表しました。

ハノーファー宮廷楽長時代

1688年、ステッファーニはハノーファー宮廷楽長の職を受け入れました。ハノーファーでは、ブラウンシュヴァイク＝リューネブルク公エルンスト・アウグスト（後のハノーファー選帝侯）や、公女ゾフィー・シャルロッテ（後のブランデンブルク選帝侯妃ならびにプロイセン王妃）、哲学者ライプニッツなど、多くの知識人や文化人と交流を深めました。また、1710年には、ハノーファーで音楽家としてのキャリアをスタートさせようとしていたヘンデルに目をかけ、支援しました。

ハノーファーでは、《ハインリヒ獅子公 Enrico il Leone》、《ヘラクレスとアキレウスの力比べ La Lolta d'Ercole con Achilleo》、《気前のよいオルランド Orlando generoso》、《敵同士の和睦 Le Rivali concordi》、《満たされた自由 La Liberia contenta》、《運命の凱旋 I trionfi del fato'》、《ブリセード Briseide》などのオペラを作曲し、成功を収めました。

外交官としての活躍

ステッファーニは音楽家としてだけでなく、外交官としてもその才能を発揮しました。エルンスト・アウグスト公が1692年に選帝侯に指名されると、彼は特命全権公使として様々なドイツ諸侯の宮廷を歴訪しました。その功績が認められ、ローマ教皇インノケンティウス11世から西インド諸島スピガの司教として聖別されました。

デュッセルドルフ時代と晩年

1698年に大使としてブリュッセルに派遣された後、ステッファーニはデュッセルドルフの宮中伯ヨハン・ヴィルヘルムに仕官しました。高位の地位に就いたため、公然と劇音楽を創作することは難しくなりましたが、1709年には秘書兼書生のグレゴリオ・ピーヴァの名を借りて2つの新作オペラの上演を実現させました。その後、イギリス王になったハノーファー選帝侯ゲオルク・ルートヴィヒ（ジョージ1世）のイギリス行きには同行しませんでしたが、ロンドン古楽アカデミーの終身名誉総裁に選ばれました。1727年に最後のイタリア訪問を果たし、ローマでヘンデルと再会しました。その後まもなくハノーファーに戻り、フランクフルトで外交業務に携わっていたさなかに急逝しました。

作品と評価

ステッファーニのオペラは、舞台運営に優れた才能を発揮していましたが、現在ではほとんど知られていません。しかし、室内カンタータなどの二重唱作品は、その美しさゆえに忘れられることはありません。彼は声楽曲においてアレッサンドロ・スカルラッティに劣ると評されることもありますが、器楽曲形式の熟練においては、同世代のイタリア人作曲家とは一線を画していました。彼の重要性は、当時のドイツ人作曲家が目指した「趣味の和合」を独自に実現させ、ヘンデルの芸術的発展の一因となった点にあります。

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