アサッテ君

『アサッテ君』

東海林さだお氏の手による日本の漫画作品、『アサッテ君』は、毎日新聞朝刊にて1974年6月16日から2014年12月31日まで、実に40年以上にわたり連載されました。その総連載回数は13,749回に達し、連載が終了した時点では、日本の主要な全国紙（朝日、毎日、読売、産経）に掲載された漫画作品の中で、史上最長記録を樹立するという金字塔を打ち立てました。

この作品は、横山隆一氏の『フクちゃん』が1971年に連載を終えた後、長らく空席となっていた毎日新聞朝刊の4コマ漫画枠を埋める形でスタートしました。物語の中心となるのは、「アサッテ君」こと平凡なヒラ社員の朝手春男です。東海林氏が得意とするサラリーマンの世界を描くと同時に、彼の家族である朝手一家を巡るホームドラマとしても展開されます。「今日よりも明日、明日よりはアサッテの方がいいだろう」という、作者自身の前向きな願いからタイトルが名付けられたとされています。連載当初は4コマ漫画でしたが、1977年7月24日から1985年8月31日までの期間は、8コマまたは7コマ形式で掲載される時期もありました。

『アサッテ君』は連載を重ねるごとにその記録を塗り替えていきました。2003年11月5日には連載10000回を達成。これは毎日新聞に連載された漫画としては、加藤芳郎氏の夕刊連載作品『まっぴら君』に次ぐ快挙でした。そして2014年8月1日には、13,616回をもって『まっぴら君』の記録（13,615回）を超え、一般全国紙における連載漫画として史上最長作品の座を獲得します。

2014年12月31日に掲載された最終回は、朝手一家が皆で「蛍の光」を合唱する温かい場面で締めくくられました。40年以上に及ぶ長い歴史に幕を下ろした『アサッテ君』の偉業に対し、朝日新聞で『フジ三太郎』を連載していた漫画家のサトウサンペイ氏が、朝日新聞紙上にて東海林氏への労いの言葉を寄せるなど、大きな反響を呼びました。また、2015年1月22日には、毎日新聞社の当時の社長から東海林氏へ、史上最長記録樹立に対する感謝状が贈られています。連載終了後、毎日新聞朝刊の4コマ漫画枠は1か月の休載を経て、いしかわじゅん氏の『桜田です!』が後継作品としてスタートしました。

なお、『アサッテ君』が樹立した一般全国紙連載漫画の最長記録は、2021年1月7日に読売新聞連載の植田まさし氏による『コボちゃん』が13,750回を達成したことにより更新されました。この際、読売新聞の特集面には、東海林さだお氏自身が描いた、アサッテ君がコボちゃんとマスク姿で握手しながら「おめでとうございます」と祝福するイラストが掲載され、漫画界における世代を超えた交流が垣間見られました。

主な登場人物

『アサッテ君』の登場人物たちの氏名は、作者の東海林氏が当初設定していなかったため、1988年に毎日新聞が一般公募を行い決定したというユニークな経緯があります。登場人物は基本的に年を取らず、設定も連載中に変更されることがしばしばありました。

朝手春男（アサッテ君）: 物語の主人公であるヒラのサラリーマン。会社ではあまり仕事熱心な様子は見られず、同僚や上司と共に時間を過ごしたり、回らない寿司屋に頻繁に通ったりしています。妻には頭が上がりませんが恐妻家ではなく、安月給ゆえに小遣いはゼロ。常にビールを渇望していますが、普段は発泡酒しか飲むことを許されていません。彼の弟が一度登場したことがありますが、それ以降は触れられなくなりました。
秋子: アサッテ君の妻。一見普通の専業主婦ですが、怠惰で見栄っ張り、自己中心的な面が強調されるキャラクターとして描かれています。読者、特に主婦層からは「こんな風になってはいけない」という反面教師的な存在と見なされることもありました。家計の苦労を嘆く一方で自分のためには浪費したり、家族には安い物を食べさせて自分だけ良い物を独り占めしたりと、徹底した利己主義が描かれます。嫉妬深く、近所の人が得をすると不機嫌になり、損をすると喜びます。意志が弱く食いしん坊のため、ダイエットが成功したことはありません。元々はアサッテ君と同じ会社に勤めるOLだったと語られています。
夏男: アサッテ君の息子。小学校高学年として描かれることが多いです。親の手伝いを屁理屈を並べて避けたり、親と共に突拍子もない言動を楽しんだり、来客があれば小遣いをねだったりと、良くも悪くも普通の小学生らしさが描かれます。髪型や身長を除けば、父親であるアサッテ君と瓜二つの容姿をしています。
冬美: アサッテ君の娘。幼稚園児から小学校低学年程度として描かれています。髪型や身長を除けば、母親である秋子と瓜二つです。
昼吉: アサッテ君の父親。定年退職後も名刺を持ち歩いており、息子一家とは家庭内別居のような状態で暮らしているようです。
夕子: アサッテ君の母親。ややボケているかのような描写が見られることもあります。顔立ちも連載初期とは変化しています。
マイ: 朝手家で飼われている猫。時々「タマ」と呼ばれることもあります。
ニチ: 朝手家で飼われている犬。時々「ポチ」と呼ばれることもあります。
上司: アサッテ君が勤める会社の部署の責任者。真面目に働かないアサッテ君の態度に頭を悩ませています。
社長: アサッテ君が勤める会社の社長。リストラに熱心で、社員を解雇する口実を探しています。将来はニートの息子に会社を継がせるつもりでいるという設定です。

これらの個性豊かなキャラクターたちが織りなす日常は、多くの読者に共感と笑いを届け、40年もの長きにわたり愛され続けました。作品は毎日新聞社などから単行本としても複数刊行されています。

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