アザミウマ

アザミウマ（薊馬）とは

アザミウマはアザミウマ目（Thysanoptera）に属する昆虫の総称であり、主にその微細な体型と特異な形状の翅で知られています。英語ではスリップス（Thrips）と呼ばれることもあり、現存する種は約5000種に達します。学名の「Thysanoptera」はギリシャ語の「thysanos」（ふさ）と「pteron」（翅）に由来し、翅の特徴を示しています。

特徴

アザミウマは細長く小さな体を持つ昆虫で、頭部が長いことからその名がつけられたと考えられています。足は短く、活発には動かず、翅は薄い膜ではなく棒状で、周囲には毛が密生しています。この特殊な翅の形状から、アザミウマ目の旧名「総翅目」が付けられました。

体長は一般的に1mm以下であり、直接的な飛行能力はほとんどありませんが、風によって移動することが可能です。また、口器は左右が非対称で構成されており、吸汁に特化していますが、カメムシのように長い口吻は持っていません。そのため、餌の体内から成分を吸い取ることはできず、主に植物の表皮に穴を開けて、その下の柔らかい組織の内容物を吸取ります。さらに、花粉や菌類の胞子の細胞壁を突いて中の成分を吸う種も多く見られます。アザミウマという和名は、古い時代においてアザミの花粉を使った子供の遊びが由来です。

生活史

アザミウマは不完全変態を行い、幼虫は成虫と似た姿をしています。しかし、成虫に成長する前に栄養を摂らない期間を持つことがあり、これを蛹と呼びます。この蛹の段階は1期または2期あり、見た目は幼虫と大差ありません。一方成虫は、幼虫に翅を追加した形状をしており、通常の完全変態とは異なる過程が確認されています。興味深いことに、アザミウマは無受精で雄が生まれ、受精すると雌になる性決定様式を持っています。この性決定方式は、特に1980年代に真社会性の進化と関連づけられ、他の昆虫でも同様の事例が探求されました。その過程で、アザミウマも注目を集め、一部の種が社会性を持つことが発見されています。

人間との関わり

アザミウマは、農作物に対して食害を及ぼすことがあり、特に温室栽培の作物において重要な害虫とされています。これらの害虫は時には大発生することがあり、農業において悩ましい存在です。ただし、アリガタシマアザミウマは他の害虫を捕食するため、逆に生物農薬として利用される研究も進められています。日本では2003年にキュウリやナスの農薬として登録されていますが、効果を得るためには季節や温度に制約があります。

分類

アザミウマは、以下のように分類されます。

• - アザミウマ（穿孔）亜目 Terebrantia

- Adiheterothripidae 科
- シマアザミウマ科 Aeolothripidae
- Fauriellidae 科
- Heterothripidae 科
- Melanthripidae 科
- メロアザミウマ科 Merothripidae
- アザミウマ科 Thripidae
- Uzelothripidae 科

• - クダアザミウマ（有管）亜目 Tubulifera

- クダアザミウマ科 Phlaeothripidae

このように多様なアザミウマは、農業においても重要な役割を果たしていますが、同時にその生態や生理についての研究が進められており、生物多様性の観点からも非常に興味深い存在と言えます。

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