アシュラフ・ギルザイ

アシュラフ・ギルザイ：短命に終わったアフガン人シャーの生涯

アシュラフ・ギルザイ（生年不詳 - 1730年）は、18世紀初頭に、わずか4年足らずの間イランのシャーとして君臨した、アフガーン人（パシュトゥーン人）の部族長です。「ギルジー部族のアシュラフ」という意味の名前が示す通り、彼はギルザイ部族連合に属していました。

生い立ちと初期の活躍

アシュラフは17世紀末から18世紀初頭にかけて、カンダハール近辺で生まれたと考えられています。彼はギルザイ部族連合の一支族であるホータク部族の有力な家系に生まれました。父は、1709年にカンダハール地方に独立政権を打ち立てたミール・ワイス・ハーン・ホータキーの弟、アブドゥルアズィーズです。つまり、ミール・ワイスはアシュラフの伯父にあたり、ミール・ワイスの息子であるマフムードやフサインとは従兄弟関係にありました。

アシュラフは、ミール・ワイスの後を継いで族長となったミール・マフムードに従い、1721年から1722年にかけてのサファヴィー朝への侵攻に参加しました。カンダハール軍はサファヴィー朝の首都イスファハーンを数ヶ月にわたって包囲し、1722年10月23日に陥落させました。シャー・スルターン・フサインは退位し、マフムードにシャー位を譲り、捕虜となりました。しかし、アシュラフはマフムードの裁定に不満を抱き、イスファハーンを離れてカンダハールに戻り、数年間をそこで過ごしました。

シャーへの即位と苦難

1725年、イスファハーンを占領していたカンダハール軍の武将たちは、アシュラフをイスファハーンに呼び戻しました。彼らは、精神的に不安定なマフムードよりもアシュラフの方が指導者にふさわしいと考え、アシュラフにシャー位を譲ることを画策したのです。アシュラフは1725年4月26日にシャー位に就き、帝位を「譲った」マフムードは、その3日後に「病死」したとされています。

イスファハーン陥落後、サファヴィー朝の旧領では各地で帝位請求者が乱立し、政治的混乱に乗じてロシア帝国とオスマン帝国が領土を侵略する事態となりました。アシュラフは、スルターン・フサインからマフムード、そして自身へと正統的に受け継がれたシャー位を持つ者として、オスマン帝国の庇護下に入った帝位請求者らが差し出した領土の返還を主張しました。

これに対し、オスマン帝国は1726年にアシュラフの政権に宣戦布告しました。アシュラフは、まずイスファハーンの宮殿に幽閉していたスルターン・フサインを殺害し、次いでイスファハーンの防備を固めてから北西に進軍し、ホッラマーバードでオスマン軍と会戦して勝利しました。彼は、兵数で圧倒的に優勢なオスマン軍に対し、内部工作によってクルド人騎兵を寝返らせ、オスマン軍の士気を低下させることに成功したのです。1727年、アシュラフはオスマン帝国との和睦にこぎつけ、サファヴィー朝旧領の北西部の領有権を放棄する代わりに、自身のシャー位をオスマン帝国に承認させました。

ロシアとの戦いではオスマン帝国との戦いほどの成果は得られませんでしたが、1729年にはラシュトで和睦条約を結び、ロシア帝国に自身の正当性を認めさせました。こうして、オスマン帝国とロシア帝国の双方から正当性を認められたアシュラフは、スンナ派のクルド人やゾロアスター教徒だけでなく、シーア派住民からも支持を得るようになりました。

没落と最期

しかし、サファヴィー朝の旧領の住民の多くは、依然としてアフガン人による支配を拒絶していました。バローチスターンではバローチ族が自立の動きを見せ、ケルマーンではシャー・スライマーンの娘の孫であるサイイド・アフマドが挙兵しました。アシュラフは1728年にこれを鎮圧しましたが、マーザンダラーンで亡命政権を維持していたタフマースブ（シャー・スルターン・フサインの息子）の勢力は侮れないものとなっていました。

タフマースブは、ホラーサーン地方の有力部族であるカージャール族とアフシャール族の支持を得ており、特にアフシャール族のナーディルクリー・ベグ（後のナーディル・シャー）が軍事的な後ろ盾となっていました。危機感を抱いたアシュラフは、ダームガーンまで軍を進めましたが、1729年のダームガーンの戦いでナーディル率いるタフマースブ軍に敗北しました。イスファハーンに逃げ戻ったアシュラフは、市民の反乱を恐れてバーザールに火を放ち、バンダレ・アッバースへと逃れました。この時点でアシュラフ軍は統制を失い、多くのアフガン兵がアラブ人に捕らえられ、奴隷として売られるという悲惨な運命をたどりました。

アシュラフ自身は、バンダレ・アッバースから海路でバスラへ向かい、オスマン帝国の庇護を求めて再起を図ろうとしましたが、海賊に襲われて断念せざるを得ませんでした。そのため、陸路でバローチスターンを通り、カンダハールへ戻ることを決意しました。しかし、1730年の冬、アシュラフは逃走中にバローチ族に襲われて殺害されたとも、ナーディルにカンダハール領有を認められたフサイン・ホータキー（アシュラフの叔父）に殺害されたとも言われています。また、フサインがマフムードの「病死」に関する疑惑からアシュラフを許さず、バローチ族に暗殺させたという説もあります。

評価

アシュラフ・ギルザイがシャーとして広大な領域を支配した期間は4年に満たない短いものでしたが、ロシアとトルコの侵攻をよく防いだことは評価されるべきでしょう。

もう一度検索