サファヴィー朝

サファヴィー朝の歴史的背景と影響

サファヴィー朝の概要

サファヴィー朝（1501年 - 1736年）は、ペルシア（現イラン）の歴史において重要な役割を果たした王朝です。16世紀から18世紀初頭にかけて、ホラーサーンからメソポタミアに至る地域を支配しました。この王朝は、シーア派の一派である十二イマーム派を国教とし、現在きわめて重要なシーア派信仰の中心地であるイランやアゼルバイジャン、イラク南部にその教えを広めることに成功しました。

サファヴィー朝の成立は、異民族の支配から脱却し、ペルシア人が国を構える意義を強調する動きがありましたが、実際にはトゥルクマーンと呼ばれるテュルク系遊牧民が軍事力を背景に台頭したもので、王朝の基盤には複雑な民族的背景がありました。

起源と宗教的背景

サファヴィー朝の起源は、13世紀末から14世紀初頭のイルハン朝期において、スーフィーのサフィー・ウッディーンによって開かれたサファヴィー教団にさかのぼります。最初はスンナ派に近い教義を持っていたこの教団は、後にシーア派に転向し、東アナトリアやアゼルバイジャンの地域の遊牧民たちを信者として取り込むことで、その軍事力を強化しました。この教団の信徒たちは「クズルバシュ」と呼ばれるようになり、彼らはサファヴィー朝の基礎を築くことになります。

サファヴィー朝の成立

1499年、わずか7歳で教主を継いだイスマーイール1世は、1501年に白羊朝を打倒して新たにサファヴィー朝を樹立しました。彼は詩人としても才能を発揮し、クズルバシュの士気を高めました。サファヴィー朝は急速に拡大し、1507年にはポルトガル海上帝国のホルムズを占領するなど、その勢力を強化していきました。

拡張とオスマン帝国との対立

1510年には中央アジアの勢力を滅ぼし、次第にホラーサーン地域を掌握しましたが、1514年のチャルディラーンの戦いでオスマン帝国と対峙し、惨敗を喫します。この敗戦はサファヴィー朝にとって大きな打撃でしたが、その後も君主は権力を維持し続けました。特に、タフマースブ1世の治世では、シーア派の教義が広まり、地方の貴族と官僚による統治が強化されました。

アッバース1世の時代と繁栄

1587年、アッバース1世が王位を継ぐと、彼はクズルバシュ勢力を制御し、国家の中央集権化を進めました。軍事制度を改革し、オスマン帝国に対抗できる新たな軍隊を編成しました。1588年にはタブリーズを離れ、ガズヴィーンを新たな首都とします。

彼の治世において、イスファハーンが大都市として発展し、文化的な中心地となりました。西欧の国々との同盟によって国外からも資源を引き寄せ、さらなる発展を遂げました。

衰退の始まり

アッバース1世の死後、サファヴィー朝は徐々に衰退し始めました。王位を巡る不安定な状況に加え、戦争や反乱が勃発し、衰退の道を歩みました。1694年から1722年にかけてのスルターン・フサインの治世は無能さが目立ち、後の反乱を招く原因となりました。1787年にはホータキー朝のミール・ワイスに率いられた反乱が成立し、最終的にはイスファハーンが陥落し、王朝が事実上滅亡する結果となります。

サファヴィー朝の影響

サファヴィー朝の影響は、イランの民族意識やシーア派の信仰に深く根付いています。イランとアゼルバイジャンの地域は、サファヴィー朝の成立によってシーア派が多数派となり、政治的・文化的アイデンティティを形成しました。この王朝によって、ペルシアの歴史と文化における重要な基盤が築かれたことは間違いありません。

サファヴィー朝はその壮大な建築物や文化的遺産も残しており、後の王朝にも大きな影響を与え続けています。

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