アジア・アフリカ作家会議

アジア・アフリカ作家会議：文学を通じた国際連帯の軌跡

アジア・アフリカ作家会議は、アジアとアフリカの作家たちが結集した国際的な文学団体です。1950年代、アジア・アフリカ諸国が植民地支配からの独立を果たし、民族自決と国際連帯の機運が高まる中で誕生しました。1955年のバンドン会議を契機に、政治的な潮流と呼応するように、文学を通じた国際的な連帯を目指す動きが活発化し、その流れの中でアジア・アフリカ作家会議が設立されました。

1956年12月、インドのニューデリーで第1回アジア作家会議が開催され、15カ国から作家が集まりました。翌年には、アフリカの作家も参加することとなり、1958年10月、ウズベキスタンのタシュケントで第1回アジア・アフリカ作家会議が開催されました。この会議には35カ国から作家が参加し、コロンボに常設事務局を設置、カメルーン、セイロン（現スリランカ）、中国、ガーナ、インドネシア、スーダン、インド、ソ連、アラブ連合共和国、日本の10カ国を常任理事国として選出しました。

その後、東京、カイロなどで会議が開催されましたが、1960年代に入ると、中ソ対立が会議の活動に深刻な影響を与えました。中ソ対立は、アジア・アフリカ作家会議を二分し、それぞれ北京とカイロに事務局が置かれる事態にまで発展しました。1967年のベイルートで開催された第3回大会では、文化大革命のさなかの中国が参加せず、事実上中国側は運動から離脱することとなりました。しかし、会議では文学雑誌『LOTUS』の創刊と、ロータス賞の創設が決定されました。

その後も、ニューデリー、アルマアタ（現アルマトイ）、ルアンダなど各地で会議は継続され、ベトナム、タシュケント、平壌、チュニスでも開催されました。雑誌『LOTUS』は英語、フランス語、アラビア語で1990年代半ばまで発行されました。

日本においても、アジア・アフリカ作家会議の設立当初から積極的に参加していました。1958年には『アジア・アフリカ作家会議日本連絡協議会』が設立され、著名な作家たちが会議に参加しました。しかし、中ソ対立の影響は日本にも及び、日本国内でも意見の対立が生じました。

1974年には『日本アジア・アフリカ作家会議』が設立され、大江健三郎、野間宏、堀田善衛といった錚々たる作家たちが参加し、国際会議の開催や機関誌の発行など活発な活動を展開しました。しかし、1990年代の国際情勢の変化を背景に、活動は次第に停滞し、自然消滅しました。

2013年には、ベトナムで50カ国の作家が参加する円卓会議が開催され、「ハノイ宣言」が採択されました。この宣言では、アジア・アフリカ作家会議の再建と、ラテンアメリカの作家も参加対象とすることを確認しました。これは、長らく活動を休止していたアジア・アフリカ作家会議にとって、新たな出発点となる可能性を示唆しています。アジア・アフリカ作家会議の歴史は、冷戦という国際情勢の激動期を背景に、世界中の作家たちが文学を通して国際連帯を目指した貴重な試みの歴史でもあります。

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