アジア・太平洋諸島系アメリカ人

アジア・太平洋諸島系アメリカ人

「アジア・太平洋諸島系アメリカ人（Asian/Pacific American, API, AAPI）」とは、アメリカ合衆国の市民権を有する人々のうち、その祖先がアジア大陸あるいは太平洋に点在する島々に起源を持つ広範なグループを指す呼称です。

この用語が対象とする地理的範囲は非常に広大であり、多様な文化、言語、歴史的背景を持つ人々が含まれます。具体的には、極東地域、東南アジア、南アジア、そして太平洋諸島が該当します。

極東地域からは、日本、中国、台湾、韓国などが含まれます。東南アジアからは、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、フィリピンといった国々が挙げられます。南アジアについては、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータンなどの国々を起源とする人々が該当します。さらに、太平洋諸島からは、サモア、フィジー、グアム、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、北マリアナ諸島、パラオといった島々の出身者が含まれます。このように、この呼称は地理的、文化的に極めて多様な集団を一つにまとめたカテゴリーであると言えます。

この用語が公的な場で用いられるようになった経緯としては、まず1978年にアメリカ合衆国議会によって制定された「アジア・太平洋諸島系アメリカ人文化遺産週間（Asian/Pacific American Heritage Week）」が挙げられます。これは、アメリカ社会におけるアジアおよび太平洋諸島系のコミュニティの貢献と文化を認識し、祝うための試みでした。その後、この取り組みはさらに拡大され、1992年には一ヶ月間を通してその遺産と文化を称賛する「アジア・太平洋系アメリカ人文化遺産月間（Asian Pacific American Heritage Month）」として定着しました。

連邦政府のレベルでの使用に加え、この分類はアメリカ合衆国の一部の州政府機関でも公式な文脈で用いられています。例えば、ワシントン州、ミシガン州、メリーランド州、コネティカット州などが、統計データの収集や政策立案において、この用語を使用しています。

「アジア・太平洋諸島系アメリカ人」というカテゴリーは、行政や統計の目的で使用されることが多い一方で、内部には非常に多様なアイデンティティが存在することを理解することが重要です。この用語は、共通の歴史や経験を持つ特定のグループを指すというよりは、アメリカという国家において、アジア太平洋地域にルーツを持つ人々を包括的に捉えるための枠組みとして機能しています。

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