アジアーゴの戦い

アジアーゴの戦い：第一次世界大戦における山岳戦の激闘

アジアーゴの戦い（Battle of Asiago）は、第一次世界大戦中のイタリア戦線において、オーストリア・ハンガリー帝国軍（以下、オーストリア軍）がイタリア王国軍（以下、イタリア軍）に対して行った大規模な攻勢作戦です。この戦いは、第五次イゾンツォの戦いの副次的な戦線であるトレンティーノ戦線で展開され、それまで防勢に徹していたオーストリア軍が初めて攻撃に転じたことで、戦況が大きく変動しました。

戦闘前の背景

オーストリア軍の司令官であるフランツ・コンラート・フォン・ヘッツェンドルフ将軍は、かつての同盟国であったイタリアが協商国側に寝返ったことに強い怒りを抱いていました。開戦当初から、山岳地帯という地形的な優位性を活かして防戦を続けていましたが、コンラート将軍は攻撃計画を練り続けていました。

その攻撃計画は、主戦力であるイゾンツォ川ではなく、副次的戦線であったトレンティーノ地方を目標とするものでした。具体的には、トレンティーノ戦線西部のイタリア第1軍をオーストリア第5軍と第3軍で包囲殲滅し、その後ヴェネツィアまで進撃、トレンティーノ戦線東部の第4軍やイゾンツォ川で対峙するイタリア第2軍、第3軍を孤立させるという大胆なものでした。

1915年12月、イタリア軍が新たな攻勢を決定したのを受けて、オーストリア軍もコンラート将軍の計画を承認しました。さらに、ドイツ軍にも増援を要請しましたが、ドイツ軍のファルケンハイン将軍は、オーストリア軍の攻撃成功を疑問視し、援軍を送る代わりに防戦を維持するように強く主張しました。しかし、コンラート将軍はドイツ軍の反対を押し切り、独断でこの作戦を決行しました。

戦闘の開始

1916年5月15日、オーストリア・ハンガリー軍は、ハンガリー第11軍団を先頭に、オーストリア第3軍がそれに続きました。2000門もの大砲による強力な砲撃支援の後、オーストリア第5軍と第3軍は、東西50kmにわたる広範囲な攻撃を開始しました。

イタリア第1軍は、この奇襲攻撃に不意を突かれたものの、右翼と左翼の陣地を死守し、戦線の拡大を阻止しました。しかし、中央陣地は持ちこたえることができず、後退を余儀なくされました。その結果、オーストリア第3軍の一部は、イタリア本土北端のアジアーゴ高原に到達しました。

戦況の転換

イタリア軍の司令官ルイージ・カドルナは、この事態を受けて、第五次イゾンツォの戦いを中断し、一部の部隊を第1軍の増援に派遣し、中央陣地の穴埋めを図りました。さらに、最悪の事態を想定し、第1軍と第4軍の後方に第5軍を新たに動員しました。しかし、状況は依然として予断を許さないものでした。

最終的に、ロシア軍が東部戦線で同盟軍に打撃を与えると、ドイツ軍のファルケンハイン将軍は、ロシア軍の攻撃に対処することを優先すべきだと主張しました。その結果、オーストリア第3軍の半数が東部戦線に送られることになり、攻勢は維持できなくなりました。イタリア第1軍の反撃により、戦線はほぼ元のラインまで押し戻されました。

戦いの影響

アジアーゴの戦いは、イタリア軍にとって危機的な状況をもたらしたものの、最終的にはオーストリア軍の攻勢を食い止めることに成功しました。しかし、この戦いの結果は、短期間で戦争を終わらせると主張していたサランドラ政権への信頼を大きく揺るがし、サランドラ首相は辞任に追い込まれました。その後、ボセッリ政権が新たに成立することになります。

アジアーゴの戦いは、山岳地帯での戦闘の厳しさと、両軍の戦略的判断が戦局に与える影響を如実に示す戦いとなりました。この戦いは、その後のイタリア戦線の展開にも大きな影響を与え、第一次世界大戦の歴史において重要な一章を刻みました。

関連項目

* 未回収のイタリア

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