アストンマーティン・DB2

アストンマーティンDB2シリーズ：英国が生んだ名車群

アストンマーティン社は、1950年から1959年にかけて、高級スポーツカーDB2シリーズを製造しました。このシリーズは、DB2、DB2/4、DBマークIIIの3つの主要モデルで構成され、それぞれに個性と魅力あふれる特徴を持っています。本稿では、それぞれのモデルの特徴や歴史的背景、モータースポーツでの活躍、そしてポップカルチャーにおける存在感を詳しく見ていきます。

DB2 (1950-1953)

DB2は、デヴィッド・ブラウン体制下で最初に発表された市販車です。DB1の後継として開発され、ラゴンダ製の直列6気筒DOHCエンジンを搭載。2.6リットルエンジンは標準仕様で105馬力、高性能版のヴァンテージ仕様では125馬力を発揮しました。当時の最高速度は187km/hに達し、0-97km/h加速も11.2秒と、現代の基準でも十分な動力性能を誇りました。

シャシーはクロード・ヒルの設計による頑丈な鋼管フレームを採用し、フランク・フィーレイがデザインした流麗なアルミボディが組み合わされました。フェンダーとボディが一体となった戦後型の2ドアクーペスタイルは、DB1とは大きく異なる洗練されたデザインです。後部の小さなトランクリッドはスペアタイヤ収納用で、荷物の出し入れは車内から行う構造でした。

1950年のル・マン24時間レースでクラス優勝を飾るなど、モータースポーツでも成功を収め、アストンマーティンを代表するスポーツカーとしての地位を確立しました。また、ニューヨーク国際オートショーでのデビューを機に、本格的な対米輸出も開始されました。

初期の49台には独立したサイドグリルが特徴でしたが、後のモデルでは一体型のフロントグリルに変更されました。さらに、ドロップヘッドクーペも102台生産されました。

DB2/4 (1953-1957)

1953年に登場したDB2/4は、DB2をベースに2+2シーターへ進化させたモデルです。スペアタイヤ用のトランクリッドはバックドアに変更され、折りたたみ式のリアシートが追加されました。このデザインは現代のハッチバック型スポーツクーペの先駆けと言えるでしょう。

外観上の変更点としては、曲面フロントウインドシールド、大型バンパー、ヘッドランプの高さが挙げられます。エンジンは当初DB2と同じVB6E型を使用していましたが、1954年には2922cc、140馬力のVB6/J型へと強化され、最高速度は193km/hに到達しました。

1955年にはDB2/4マークIIが登場。エンジンはDB3Sで培われた技術を活かし、165馬力に向上しました。また、当時の流行を取り入れたテールフィンが追加されました。製造はフェルサムからデヴィッド・ブラウンが買収したティックフォードに移管され、これは後のアストンマーティン生産拠点の集約へと繋がります。マークIIでは、2シーターのフィックストヘッドクーペもラインナップに加わりました。

DBマークIII (1957-1959)

DBマークIIIは、1957年3月に登場したDB2/4マークIIの改良モデルです。DB3Sを彷彿とさせるシンプルなフロントグリル、新しいダッシュボード、油圧式クラッチなどが採用されました。トランスミッションには、オーバードライブやオートマチックトランスミッションがオプションで選択可能でした。

初期モデルはドラムブレーキでしたが、後にディスクブレーキに変更されました。標準モデルのDBAは162馬力、オプションのデュアルエグゾーストシステム装着時は178馬力、ハイパフォーマンス版DBBは195馬力を発揮しました。

ポップカルチャーにおけるDB2シリーズ

アストンマーティンDB2シリーズは、映画や小説にも登場し、その存在感を示しています。アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『鳥』にはDB2/4ドロップヘッドクーペが、イアン・フレミングの小説『ゴールドフィンガー』にはジェームズ・ボンドが運転するDBマークIIIが登場します。特に、『ゴールドフィンガー』に登場するDBマークIIIは、秘密情報部による改造が施され、様々なガジェットを搭載した特別な一台として描かれています。

まとめ

アストンマーティンDB2シリーズは、卓越した技術力と美しいデザインを融合させた、英国を代表する名車シリーズです。モータースポーツでの活躍や、ポップカルチャーにおける存在感も相まって、今日でも高い人気を誇っています。その歴史と魅力は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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