アストンマーティン・DB4

アストンマーティン DB4：英国が生んだ美しいスポーツカー

アストンマーティンDB4は、1958年10月から1963年6月にかけて、アストンマーティン・ラゴンダによって製造されたスポーツカーです。DB2/3シリーズの後継モデルとして登場し、洗練されたデザインと優れた走行性能を兼ね備え、同社の歴史において重要な位置を占めています。

DB4の生産期間中には、Sr.1からSr.5までの複数のモデルが存在し、それぞれに細かな改良が加えられています。中でも注目すべきは、1961年からオプション設定された高性能ヴァンテージ仕様です。よりパワフルなエンジンと強化された足回りによって、スポーティな走りをさらに追求したモデルとなっています。

さらに、1959年には高性能モデルとしてDB4GTが登場しました。DB4GTは、軽量化されたボディと強化されたエンジンを搭載し、よりレーシング志向の強いモデルとして開発されました。そして、翌1960年には、カロッツェリア・ザガートがボディ製作を担当したDB4GTザガートが登場。軽量化されたボディは、より優れた走行性能をもたらしました。

機構とスタイリング：伝統と革新の融合

DB4の心臓部には、タデック・マレックが設計した3,670ccの水冷直列6気筒DOHCエンジンが搭載されています。これは、それまでのウォルター・オーウェン・ベントレー設計のエンジンから大きく変更されたもので、軽量の全軽合金製が採用されました。標準モデルでは240馬力を発揮しますが、ヴァンテージ仕様では3基のSU製キャブレターにより266馬力まで向上します。このRB6型エンジンは、DB4の開発前にDBR2に搭載され、1957年のル・マン24時間レースでその性能を証明しています。

シャシは、DB2までの鋼管構造から、鋼板溶接のプラットフォーム上に小径鋼管溶接によるボディ骨格を形成するという、当時としては革新的な構造に変更されました。さらに、カロッツェリア・ツーリングによるスーペルレジェッーラと呼ばれる軽量なアルミニウムボディパネルを採用することで、軽量化と高剛性化を実現しています。

トランスミッションには、アストンマーティンの親会社であるデヴィッド・ブラウン製の4速MTが組み合わされ、スムーズなシフトチェンジを可能にしました。ブレーキは、ロッキード製のバキュームサーボ付き4輪ダンロップ・ディスクブレーキを採用し、当時のスポーツカーとしては優れた制動力を発揮しました。

ヘッドライトは、初期のモデルではノンカウルタイプ（ホークアイ）でしたが、後のヴァンテージ仕様や最終モデルのSr.5では、DB4GTと同様のプレクシグラス製カウル付きヘッドライトに変更されました。この変化は、エアロダイナミクスの向上にも貢献しています。

DB4は、伝統的なアストンマーティンのデザインを踏襲しつつも、革新的な技術を積極的に取り入れることで、優れた走行性能と美しいスタイリングを両立した、まさに名車と言える一台です。その存在感は、現代においても多くの自動車愛好家から高く評価されており、希少価値の高いコレクターズアイテムとして人気を博しています。

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