アスペリティ

アスペリティとは

アスペリティ（英: asperity）とは、もともと英語で物体の表面の粗さを表す言葉です。地震学においては、1980年に地震学者のソーン・レイと金森博雄によって提唱された概念で、断層面における不均一な領域を指します。しかし、その定義は統一されておらず、研究者や文献によって異なる意味合いで用いられており、混乱を招いているのが現状です。

アスペリティの概念

アスペリティは、断層面における以下の様な領域を指すことがあります。

断層面中の突起: 断層面上で突出した部分。
破壊強度の大きな領域: 地震の際に破壊されにくい、強度の高い領域。
地震時の単位面積あたりのモーメント解放量が大きな領域: 地震の際にエネルギーが多く放出される領域。
固着域: 通常は固着しているが、地震時に大きくずれ動く領域。

このように、アスペリティは複数の意味を持つため、文脈に応じて解釈する必要があります。

定義の変遷

南海トラフの巨大地震モデル検討会では、当初アスペリティを「強い強震動を発生させる領域」と「断層すべりの大きな領域」として定義していましたが、誤解を避けるため、以下のように用語の定義を改めました。

強震動生成域: 断層面の中で特に強い地震波（強震動）を発生させる領域。地震の揺れを評価する際に使用されます。
大すべり域: 断層面の中で大きく滑る領域。津波を評価する際に使用されます。特に大きく滑る領域は超大すべり域と呼ばれます。

これらの用語は、アスペリティの持つ曖昧さを解消し、より明確に現象を捉えるために導入されました。

プレート間地震におけるアスペリティ

プレート境界では、プレート同士が滑らかに滑る「安定すべり領域」と、圧力によって密着して滑りにくい「固着域」が存在します。アスペリティは、この固着域に対応します。固着域では、歪みが蓄積され、プレートの耐力を超えると、一気に滑ってプレート間地震が発生します。つまり、アスペリティは地震発生のメカニズムにおいて重要な役割を果たしていると言えます。

関連用語

スロースリップ: プレート境界でゆっくりとずれ動く現象。
定常すべり: プレートが安定的に滑り続ける現象。

まとめ

アスペリティは、地震学において重要な概念でありながら、その定義が曖昧で、複数の意味を持つ用語です。そのため、文脈を理解して適切に解釈する必要があります。近年では、アスペリティの曖昧さを解消するために、より明確な用語が用いられるようになっています。アスペリティの研究は、地震発生のメカニズムを理解し、地震災害の軽減に貢献することが期待されています。

参考文献

瀬野徹三：アスペリティとバリアー
菊地正幸「アスペリティって何? - 地震研究の新たなキーワード - (PDF) 」『なゐふる』第33号、4-5頁、日本地震学会、2002年。
* 根本信, 高瀬嗣郎, 長谷部大輔 ほか、日本海におけるアスペリティを考慮した津波波源モデルの検討 土木学会論文集B2(海岸工学) 2009年 65巻 1号 p.346-350, doi:10.2208/kaigan.65.346

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