定常すべり

定常すべり：沈み込むプレートの静かな動き

地球のプレートは絶えず動き続けており、その境界部では様々な現象が起きています。地震は最も劇的な現象ですが、それ以外にもゆっくりとした動きが観測されています。その一つが「定常すべり」です。

定常すべりとは？

定常すべりとは、沈み込み帯の深い部分で起こる、地震波を伴わないプレートのすべりです。他の非地震性すべりであるスロースリップ（準定常すべり）と区別されます。通常の地震（地震性すべり）とは対照的に、静かにゆっくりとプレートがずれていく現象です。

定常すべりの特徴

定常すべりの最も重要な特徴は、地震波を発生させないことです。そのため、従来の地震計では検知できず、GPSや変位計といった精密な観測機器を用いて、プレートのわずかな変位を捉えることでその存在が確認されます。

発生場所とメカニズム

定常すべりは、プレート境界の深部、地下60kmを超える場所で発生します。この深さでは、地殻は高温高圧の状態にあり、アセノスフェアと呼ばれる液体状のマントルが存在します。海洋プレートは、このアセノスフェアの中を沈み込んでいきます。大陸プレートは、この深さでは液体状のアセノスフェアに混ざり込んでいるため、固体の海洋プレートがアセノスフェアを沈み込む構造となっています。

この深さでは、プレート間の摩擦が非常に小さいため、プレートはゆっくりと、かつ滑らかにすべることができます。この滑らかな動きが、地震波を発生させない理由です。プレート境界は、アスペリティ（固着域）、遷移領域、安定すべり域の3つの領域に分けられますが、定常すべりはこの安定すべり域で発生します。

定常すべり、スロースリップ、地震性すべり

プレート境界でのすべり現象には、定常すべり以外にも、スロースリップ（準定常すべり）や地震性すべり（通常の地震）が存在します。これらはすべりの速度や、地震波の発生の有無で区別されます。定常すべりは、これらの中でも最もゆっくりとした、地震波を伴わないすべり現象です。スロースリップは、定常すべりよりも速く、わずかな地震波を伴う場合もあります。一方、地震性すべりは、断層面で急激なすべりが発生し、強い地震波を伴います。

海洋プレート内地震との関連

定常すべりとは別に、海洋プレート内部で発生する海洋プレート内地震も存在します。これは、海洋プレート自身の破壊によって起こる地震で、定常すべりとは異なるメカニズムによって発生します。

まとめ

定常すべりは、地震計では検知できない、ゆっくりとしたプレートのすべり現象です。GPSなどの精密な観測技術の発展により、その存在が明らかになり、プレート運動の理解を深める上で重要な役割を果たしています。今後、更なる研究によって、定常すべりのメカニズムや、地震発生との関連性が解明されていくことが期待されます。

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