アズマモグラ

アズマモグラ（Mogera imaizumii）

アズマモグラは、モグラ科モグラ属に分類される日本固有の哺乳類です。

分布

本州（静岡県・長野県・石川県以北、越後平野の一部を除く）、京都府の山地、広島県庄原市の山地、三重県の鈴鹿山脈、紀伊半島南部、四国（剣山や石鎚山などの山地）、小豆島の一部に隔離分布しています。これらの隔離個体群は、かつて広く分布していたものが、気候変動や環境変化によって取り残された遺存個体群と考えられています。コウベモグラとの競合や、土壌の浅い場所、断崖などの地形的な要因が分布を制限していると考えられています。

形態

体長は12.1 - 15.9cm、尾長は1.4 - 2.2cm、体重は48 - 127gです。地域による変異が大きく、山地個体群は小型で、太平洋岸平地個体群は大型になる傾向があります。体重は約2倍の差が見られます。視力は弱く、尾は非常に短いのが特徴です。毛色は山地個体群では暗褐色、河川下流域の平野部個体群では褐色みが強くなります。

吻上面の裸出部は長方形をしています。上顎口蓋部の大きさは普通で、上顎の切歯の歯列は浅いV字状をしています。上顎の小臼歯は左右に3本ずつ、下顎の小臼歯は左右に2本ずつあります。

小型の個体については、コモグラ M. i. minor として亜種とする説もあります。

モグラは繁殖期以外は雌の膣口が閉じていることが多く、雄も陰嚢を持たないため、外見からの雌雄判別が難しいです。しかし、生殖突起と肛門との距離を測定することで判別が可能です。

生態

低地の草原や農耕地から山地の森林にかけて生息します。湿潤で土壌の深い平野部を好みますが、森林内でも土壌が豊かな場所には生息します。地下にトンネルを掘り、その中で生活します。掘り出された土は地上に出され、モグラ塚を形成します。活動と休息を含む1日3回の周期的な活動をしています。山形大学の研究によると、山地林におけるアズマモグラの生息密度は、森林の植生や土壌環境によって異なり、ミミズが多い場所ほど生息密度が高い傾向があることが明らかになっています。

食性は主に昆虫やミミズですが、ジムカデ類、ヒル、植物の種子なども食べます。

トンネルの奥には、広葉樹の落ち葉を集めた直径約40cm、高さ約36cmのボール状の巣を作り、繁殖を行います。主に春に1回に2 - 6匹の幼獣を産みます。遺伝マーカーを用いた親子判定の研究では、一腹の仔の父親は1個体であったことが示唆されており、今後の追加研究が期待されています。寿命は約3年です。

種の保全状況評価

都道府県版レッドデータブックにおいて、西日本では分布が局地的なため、多くの地域で絶滅危惧種または準絶滅危惧種に指定されています。森林伐採等による土壌の乾燥化や、それに伴う生息地の消滅が主な原因と考えられています。一方、東日本では比較的広範囲に生息しているため、IUCNの保全状況では軽度懸念（Least Concern）に分類されています。

大阪府 - 絶滅危惧I類
愛知県 - 絶滅危惧II類
京都府・鳥取県・広島県・香川県 - 準絶滅危惧
滋賀県 - 希少種
愛媛県・高知県 - 情報不足
和歌山県 - 学術的重要

参考文献

小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2002年、P101

関連項目

モグラ科
* モグラ属

もう一度検索