アセテート繊維

アセテート繊維：歴史、特徴、用途

アセテート繊維は、天然のセルロースを原料とする半合成繊維です。セルロースを酢酸で処理して作られるアセチルセルロースから製造されており、そのアセチル基の結合数によって、ジアセテートとトリアセテートに分類されます。ジアセテートは生産量が多く、トリアセテートは耐熱性に優れるという特性を持っています。

歴史

アセテート繊維の開発は20世紀初頭に遡ります。1921年には開発に成功し、1924年には工業生産が始まりました。その後、世界各国で生産が拡大し、日本でも1948年から生産されています。たばこのフィルターへの応用は、1950年代から本格化し、現在でも主流の素材となっています。

特徴と性質

アセテート繊維は、絹のような光沢と滑らかな風合いが特徴です。適度な吸湿性も持ち合わせており、快適な着用感を実現します。一方で、伸張や摩擦に対する耐久性はそれほど高くないため、高級衣料品などに用いられることが多いです。

ジアセテートは合成が容易で生産量が多い一方、トリアセテートは高い耐熱性を有します。ただし、トリアセテートはジアセテートと比較して吸湿性に劣ります。たばこのフィルターには、主に臭いの発生が少ないジアセテートが使用されています。また、アセテート繊維は有機溶剤に溶解するという性質も持ちます。

アセチルセルロースは、微生物による分解も可能なため、環境面への配慮も考慮されています。ただし、その分解速度は、短期間で分解することを目的とした澱粉系生分解性プラスチックとは異なります。

製造と用途

アセテート繊維の製造工程は、まず木材パルプから抽出されたセルロースを酢酸と反応させてアセチルセルロースを得ることから始まります。このアセチルセルロースを溶剤に溶かし、細い穴から噴射、乾燥させることで繊維状に整形します。溶剤や添加剤には人体に有害な物質が含まれる場合もあるため、安全データシートを参考に注意深く取り扱う必要があります。

アセテート繊維は、主に衣料品に使用されます。その光沢と柔らかな風合いは、高級感のある衣服を作るのに最適です。その他にも、たばこのフィルター、防火カーテンなど、多様な分野で利用されています。特にたばこのフィルターとしては、熱を加えても不快な臭いを発生させないことから、たばこの風味を損なわない素材として重宝されています。また、アセチルセルロースの難燃性を利用し、防火カーテンなどの素材としても使用されています。

まとめ

アセテート繊維は、その独特の風合い、吸湿性、耐熱性、難燃性など、多様な特性を備えた素材です。衣服からたばこのフィルター、防火製品まで、幅広い用途に用いられ、私たちの生活に貢献しています。今後もその特性を生かした新たな用途開発が期待されます。

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