アセンとペタルの蜂起

アセンとペタルの蜂起：ブルガリア独立への道

12世紀後半、東ローマ帝国の支配下にあったブルガリアでは、過酷な重税が課せられ、民衆の不満は頂点に達していました。そのような状況下、アセンとペタルの兄弟が立ち上がり、ブルガリアの独立を求める反乱を組織しました。彼らは、クマン人またはワラキア人という説がありますが、その出自は定かではありません。

反乱の勃発と初期の展開

1185年、アセンとペタルの兄弟は、ヴェリコ・タルノヴォでブルガリアの独立を宣言しました。この宣言は、長年東ローマ帝国の圧政に苦しめられてきたブルガリアの人々の心を捉え、反乱は瞬く間に拡大しました。反乱軍はドナウ川沿岸の要衝を次々と占拠し、勢いに乗じてトラキア地方へと進撃しました。

当初、東ローマ帝国は、ヨハネス・カンタクジノス率いる討伐軍を派遣しましたが、反乱軍の勢いを止めることはできず、逆に討伐軍は撃破されました。事態を重く見た皇帝イサキオス2世アンゲロスは自ら軍を率いてブルガリアへと出陣しました。皇帝軍は反乱軍をドナウ川以北へと押し戻し、一時的に反乱を鎮圧したかに見えました。

反撃と独立の確立

しかし、反乱軍はここで終わることはありませんでした。ペタルとアセンは、クマン人の援軍を得て再び勢力を盛り返し、ブルガリア北部を解放しました。東ローマ軍は、反乱軍が立て籠もるロヴェチの要塞を攻めましたが、数ヶ月の包囲戦にも関わらず、要塞を落とすことはできませんでした。疲弊した東ローマ軍は、やむを得ず和約を結び、ブルガリアから撤退せざるを得なくなりました。（ロヴェチ包囲戦）。この時点で、ブルガリアの独立はほぼ確実なものとなりました。

その後、アセンはイヴァン・アセン1世としてツァーリ（皇帝）に即位し、ブルガリアの再興を宣言しました。そして、東ローマ軍が再び侵攻してきた際には、トリャヴナの戦いでこれを打ち破り、ブルガリアの独立を決定的なものとしました。

蜂起の意義

アセンとペタルの蜂起は、ブルガリアの歴史における重要な転換点であり、東ローマ帝国の支配からの独立を勝ち取った出来事です。彼らの勇敢な行動は、長きにわたり他国からの支配を受けていたブルガリアの人々に、自立への希望と誇りを与えました。この蜂起は、その後のブルガリアの歴史において、民族意識の形成や国家建設の基礎となる重要な出来事として記憶されています。

参考資料

* 森安達也、今井淳子 共訳『ブルガリア―風土と歴史』ISBN 4770404565

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