イサキオス2世アンゲロス

イサキオス2世アンゲロスは、12世紀の東ローマ帝国、アンゲロス王朝の初代皇帝です。1156年にアンドロニコス・アンゲロスの息子として生まれ、コムネノス王朝の血を引く家系に連なります。

即位までの道のり

イサキオスの生きた時代、コムネノス王朝のアンドロニコス1世は独裁的な政治を行っており、その強権的な支配は多くの反感を買っていました。イサキオス自身も、コムネノス家の遠縁にあたるため、アンドロニコス1世から警戒され、命を狙われることもあったとされています。

しかし、アンドロニコスの暴政に対する国民の不満は頂点に達し、1185年、イサキオスを指導者とする反乱が勃発します。この反乱によってアンドロニコス1世は殺害され、イサキオスは国民と貴族の支持を得て皇帝に即位しました。

失政と廃位

即位当初、イサキオスはノルマン人の侵攻を撃退することに成功しますが、その後の治世は困難を極めます。1186年には、支配下にあったブルガリアが独立を宣言し、第二次ブルガリア帝国を建国。東ローマ帝国との対立が始まります。さらに、1188年には小アジアでテオドロス・マンカファースが反乱を起こし、自ら皇帝を名乗るなど、帝国は混乱に陥ります。

イサキオスは帝国の威信回復のため、大規模な遠征を計画しますが、ブルガリア遠征は二度にわたり失敗に終わります。1195年、三度目のブルガリア遠征を計画したものの、弟のアレクシオスに反対され、廃位・幽閉されてしまいます。その後、イサキオスは弟によって盲目にされ、権力を失いました。

神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世は、イサキオスの復位を画策し、十字軍にビザンツ帝国の参加を要求し、毎年貢納金を差し出すよう求めました。この結果、アレクシオスは民衆から特別税を徴収せざるを得なくなり、帝室の陵墓を暴くという事態にまで至りました。ハインリヒは弟のフィリップをイサキオスの娘と結婚させ、イサキオスの復讐を企てていました。

復位と最期

帝国の威信はますます衰退し、イサキオスの息子であるアレクシオス4世は、父の復位を果たすため、第4回十字軍を味方に引き入れます。アレクシオス4世は十字軍に対し、資金援助や東西教会の統一を条件として提示し、コンスタンティノープルへの侵攻を成功させます。1203年7月、アレクシオス3世は皇位を追われて逃亡、アレクシオス4世は幽閉されていた父イサキオスを救出し、共同皇帝として即位しました。

しかし、アレクシオス4世が復位のために約束した軍資金の負担は、民衆を圧迫し、不満を高めます。1204年、皇族のアレクシオス5世ドゥーカスの反乱が勃発し、イサキオス2世とアレクシオス4世は共に殺害されました。これにより、イサキオス2世の波乱に満ちた生涯は幕を閉じました。享年49歳でした。

家系

イサキオス2世の家系は以下の通りです。

曽祖父：アレクシオス1世コムネノス（コムネノス朝初代皇帝）
祖父：コンスタンティノス・アンゲロス
祖母：テオドラ・コムネナ（アレクシオス1世の娘）
叔父：ヨハネス・アンゲロス・ドゥーカス
叔父の王子（庶子）：ミカエル1世コムネノス・ドゥーカス（エピロス専制侯初代王）
父：アンドロニコス・アンゲロス
母：エウフロシュネ
后：エイレーネー
王子：アレクシオス4世アンゲロス（アンゲロス朝3代皇帝）
王女：エイレーネー（シチリア共治王ルッジェーロ3世妃、のち神聖ローマ皇帝フィリップ后）
王女：エウフロシュネ・アンゲリーナ（修道女、もしくはキエフ大公ロマン・ムスティスラーヴィチ妃）
后：マルガレーテ・マリア
王子：マヌエル・アンゲロス
王子：ヨアンネス・アンゲロス

参考資料

Lexikon des Mittelalters. Bd. V. München/Zürich: Artemis & Winkler 1991

関連項目

蒼き狼と白き牝鹿シリーズ（光栄）

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