アダサウルス

アダサウルスは、白亜紀後期マーストリヒト期（約7200万～6600万年前）に生息していた小型の肉食恐竜です。モンゴルの古生物学者リンチェン・バルスボルドによって1983年に命名・記載されました。

形態と特徴

アダサウルスは体長約1.8メートルと推定される小型の獣脚類で、二足歩行をしていました。後肢の第二趾には、獲物を捕らえるための鎌状の鉤爪を持っていました。属名はモンゴルの神話に登場する悪霊「アダ」と、古代ギリシア語で「トカゲ」を意味する「sauros」を組み合わせたものです。種小名の「mongoliensis」は、化石が発見されたモンゴルに由来します。

分類

アダサウルスは、現生鳥類に近縁なドロマエオサウルス科に分類されます。ドロマエオサウルス科には、デイノニクスやヴェロキラプトル、ミクロラプトルなどが含まれています。アダサウルスの科内での正確な位置づけはまだ議論の余地があり、伝統的にはドロマエオサウルス亜科に分類されていましたが、最近の研究ではヴェロキラプトル亜科に属する可能性も指摘されています。

発見場所と地質年代

アダサウルスの化石は、モンゴル南部ゴビ砂漠のネメグト層で発見されました。ホロタイプ標本（IGM 100/20）は、部分的な頭骨を含む不完全な骨格で、脊椎、骨盤、肩帯、後肢などが含まれています。パラタイプ標本（IGM 100/51）は、別の個体の後肢を含む下半身で構成されています。これらの標本は、現在モンゴル地質研究所に保管されています。

ネメグト層の地質年代は正確には特定されていませんが、一般的には白亜紀後期マーストリヒト期のものと考えられています。この地層からは、ティラノサウルス類のタルボサウルス、オルニトミムス科のアンセリミムス、トロオドン科のザナバザル、ハドロサウルス類のサウロロフスなど、多様な恐竜化石が発見されています。

アダサウルスは、小型ながらも特徴的な形態を持つドロマエオサウルス科の一員として、白亜紀末期の生態系において重要な役割を果たしていたと考えられています。今後の研究によって、その生態や進化における位置づけがさらに明らかになることが期待されます。

参考文献

* Barsbold, Rinchen (1983). Carnivorous dinosaurs from the Cretaceous of Mongolia. Transactions of the Joint Soviet-Mongolian Paleontological Expedition 19: 5–119.

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