アッサム・チベット地震

アッサム・チベット 地震（1950年）

1950年 8月15日、インド北東部とチベットに壊滅的な被害をもたらしたアッサム・チベット地震が発生しました。この地震は、モーメントマグニチュード8.6を記録し、20世紀で6番目に大きい地震であり、海洋性沈み込み帯以外で発生した地震としては、観測史上最大級の規模を誇ります。

地震の概要

震源は、インドのアッサム州東北辺境地区（現在のアルナーチャル・プラデーシュ州）のヒマラヤ山脈東端、カンリガルポの南に位置するミシミ丘陵です。この地域は、インドと中国の国境紛争地域であり、マクマホン・ラインの南に位置しています。

この地震は、インドとチベットの両方に甚大な被害をもたらし、約4,800人が亡くなりました。地震発生時には、巨大な音響が観測されたことも記録されています。

地質学的背景

インド北東部の地震活動の歴史を解明するために、国立地理学研究所やブバネーシュワル物理学研究所の研究者たちが現地調査を行いました。その結果、過去の地震活動によって形成された地層や液状化の痕跡が発見され、放射性炭素年代測定により、約500年前の地層であると判明しました。これは、1548年に記録された地震と一致する可能性があります。

地震の発生メカニズム

アッサム・チベット地震は、ヒマラヤ山脈と横断山脈の間の山岳地帯で発生しました。この地震は、2つの大陸プレートの衝突によって引き起こされ、沈み込み帯以外で発生した地震としては最大級の規模です。

地震後には、マグニチュード6以上の余震が多数発生しました。これらの余震のデータから、震源域は東経90度から97度までの広範囲に及んでいたと推定されています。

地震による影響

アッサムとチベットでは、この地震によって甚大な被害が発生しました。アッサムでは1,526人、チベットでは3,300人が亡くなり、合計で約4,800人の死者が報告されています。

ミシミ丘陵周辺では大規模な落石が発生し、救援活動に支障をきたしました。また、アーバー丘陵では地滑りによって70の村が破壊され、156人の死傷者が出ました。地滑りによってブラマプトラ川の支流が一時的に塞き止められ、ディバング渓谷では土砂ダムが決壊しましたが、幸いにも被害は軽微でした。しかし、スバンシリ川では土砂ダムが決壊し、7メートルの波が複数の村を襲い、532人が死亡しました。

アッサムでは、経済的損失が1897年のアッサム地震よりも大きくなりました。地震による激しい揺れに加え、土砂や泥、樹木などが流れ込み、大規模な洪水が発生しました。被害の大きかった地域を飛行したパイロットは、地形が大きく変化したことを報告しています。

チベットでは、ハインリヒ・ハラーがラサで強い揺れと地鳴りを経験し、数日間余震が続いたことを報告しています。また、チベットのリマ（現在のザユル県）では、フランク・キングドン＝ウォードが激しい揺れ、大規模な地滑り、川の水位上昇を記録しています。

さらに、ミャンマー北部に住んでいたアメリカの宣教師ヘレン・マイヤーズ・モースは、手紙の中で本震や余震、地鳴りについて述べています。

アッサムでは、本震よりも数日後に発生した余震の方が大きく感じられたという証言もあります。これは、地震の規模（マグニチュード）と揺れの強さという基本的な概念の混同によるものです。本震時に多くの人が聞いたという大音響については、特に調査が進められています。また、ノルウェーやイギリスなど、遠く離れた場所でも副振動が観測されました。

さらなる脅威

2001年のインド西部地震を受けて発表された論文では、ヒマラヤ山脈の70%の地域で大規模な地震が発生する可能性があると推定されています。この予測は、過去の地震記録や、1950年の地震以降に蓄積された歪み量に基づいており、今後も大規模な地震が発生するリスクが高いことを示唆しています。

2015年には、ネパールで再び大地震が発生し、ヒマラヤ山脈における地震活動のリスクが改めて認識されました。

アッサム・チベット地震