アッタバード湖

アッタバード湖は、パキスタンのギルギット・バルティスタン州、フンザ渓谷に位置する人造湖です。2010年1月4日、この地域で発生した大規模な地すべりがフンザ川を堰き止め、天然ダムを形成したことで誕生しました。

形成の経緯

地すべりによって川が塞き止められた当初は小規模な貯水でしたが、雪解け水が流れ込むにつれて水量が急速に増加し、アッタバード湖と呼ばれるまでに成長しました。この湖の形成は、自然災害が地形を大きく変え、人間の生活に直接的な影響を与える事例として注目されています。

湖の規模と特性

日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）の陸域観測技術衛星「だいち」による観測データから、湖の規模が明らかになりました。2010年5月30日の画像分析によると、湖の面積は約1,060ヘクタール、最大水深は約120メートル、平均水深は約35メートル、貯水量は3億7911万4580立方メートル（東京ドーム約300個分）と推定されています。これらの数値から、アッタバード湖が非常に大規模な湖であることがわかります。

被害状況

湖の拡大に伴い、周辺地域には深刻な被害が発生しました。特に、カラコルム・ハイウェイという重要な幹線道路が湖底に水没したことは、地域経済に大きな打撃を与えました。また、複数の橋梁が使用不能になり、交通網が麻痺しました。さらに、湖畔にあった村々も水没し、約1,700人の住民が避難を余儀なくされました。住民の多くは、果樹園などの農業を主な収入源としていましたが、これらの農地も水没したため、生活基盤を失うという事態に陥りました。

復旧の取り組み

カラコルム・ハイウェイは、水没した区間において、一時的に渡し船による代替輸送が行われました。その後、2015年にハイウェイは復旧し、交通の便は改善されました。しかし、湖によって失われた村々や農地は依然として水没したままであり、住民の生活再建は依然として課題となっています。

その他の影響

アッタバード湖は、その形成によって周辺の生態系にも変化をもたらしました。水没した地域に生息していた動植物は、その生息地を失い、新たな生態系の形成が始まりました。また、湖の存在は、地域全体の気候にも影響を与える可能性が指摘されています。

自然災害と防災

アッタバード湖の形成は、自然災害がいかに大きな影響を社会に与えるかを示す事例です。また、土砂災害による天然ダムの形成が、大規模な災害を引き起こす可能性も示唆しています。このような災害の教訓を活かし、今後の防災対策に役立てることが重要です。

関連事項

土砂災害
土石流（天然ダムが決壊した場合に生じる可能性がある）


アッタバード湖の事例は、自然災害の脅威と、それに対する備えの重要性を改めて私たちに教えてくれます。この湖は、その美しさの裏に、自然の力と災害の恐ろしさを秘めた存在として、私たちの記憶に刻まれることでしょう。

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