カラコルム・ハイウェイ

カラコルム・ハイウェイ:歴史と自然が織りなす壮大な道



カラコルム・ハイウェイ(KKH)は、中国新疆ウイグル自治区パキスタンギルギット・バルティスタンを結ぶ、全長約1300キロメートルの高山道路です。世界最高地点を通過する舗装道路として知られ、その建設には多くの困難と犠牲が伴いました。古代シルクロードの一部をなぞり、歴史的にも戦略的にも重要な役割を担っています。

概要


KKHは、中国のカシュガルからパキスタンのハヴェリアンまでを結び、さらにハッサンアブダルで大幹線道路へと接続します。その大部分はパキスタン領内を通過し、カラコルム山脈を横断する壮大なルートです。この道は、古代のシルクロードの交易路としても利用されていました。

歴史


KKHは、中国とパキスタンの両政府によって建設されました。建設開始から約20年の歳月を経て1978年に完成しましたが、建設中には多くの労働者が地滑りや事故で命を落としました。パキスタン側では、FWO(国境作業組織)が道路建設を担当し、パキスタン陸軍工兵隊が協力しました。現在、パキスタン軍のチーフエンジニア分隊は、KKHの歴史を記録するプロジェクトを進めており、建設に関わった古参兵の証言などをまとめる取り組みが行われています。

戦略的意義


KKHは、カシミール地方を巡るインドとパキスタンの対立において、戦略的に重要な拠点となっています。また、中国にとっては、パキスタンへの輸出入ルートとしてだけでなく、中国が支援するグワーダル港と新疆ウイグル自治区を結ぶ、中東やアフリカへの資源アクセスを確保するための重要な経路でもあります。中国政府は、この道路の拡幅工事など、パキスタンへの援助を積極的に行っています。

水没と復旧


2010年、フンザ地区で発生した大規模な地滑りによってフンザ川が堰き止められ、アッタバード湖が形成されました。これにより、KKHの一部が水没し、長期間通行止めとなりました。一時的に、ボートやヘリコプターでの移動しかできない状況となりましたが、中国の一帯一路構想のもと、2015年にトンネルなどが復旧され、通行が再開されました。

観光


近年、KKHは冒険旅行の目的地として人気を集めています。登山家やトレッカーにとって、この道はカラコルム山脈の高峰や氷河、湖へのアクセスを容易にし、多くの人々を魅了しています。フンザ地区は、特に美しい農村風景が広がり、日本の旅行者の間では「風の谷」のモデルとして知られています。しかし、9.11テロ以降、パキスタン周辺の治安悪化により、観光客は減少しました。

山と氷河


KKHからは、パキスタン北部の山岳地帯や、新疆ウイグル自治区の山々へのトレッキング・クライミングルートへのアクセスが可能です。バルトロ氷河など、世界最大級の氷河を訪れることもできます。また、世界にある8000メートル峰のうち、パキスタンにある5つの山への登山ルートも、このハイウェイからアクセス可能です。

ムズターグ・アタ(7,546m)
コングール山(7,649m)
K2(8,611m、世界第2位)
ブロード・ピーク(8,047m、世界第12位)
ガッシャーブルムI峰(8,080m、世界第11位)
ガッシャーブルムII-IV峰(8,035m - 7,932m、世界第13-17位)
ナンガ・パルバット(8,125m、世界第9位)
マッシャーブルム(7,821m、世界第22位)



KKHは、美しい湖へのアクセスも容易にします。以下のような湖を訪れることができます。

カラクリ湖新疆ウイグル自治区
Sheosar Lake(デオサイ平原、パキスタン
サトパラ湖(スカルドゥ、パキスタン
シャングリラ湖(スカルドゥ、パキスタン
* ラマ湖(アストール付近、パキスタン

デオサイ平原


標高4,115メートルに位置するデオサイ平原は、世界で2番目に高い平原であり、広大な景色と高山植物を楽しむことができます。1993年にはデオサイ国立公園に指定されました。

壁画ペトログリフ


KKH周辺には、2万点以上もの壁画ペトログリフが存在し、古代の人々の生活や文化を伝えています。これらの彫刻は、紀元前5000年から1000年にさかのぼり、さまざまな侵入者、商人、巡礼者によって持ち去られたり、破壊されたりしていますが、考古学者によって研究されています。

交通機関


中国のカシュガルとパキスタンのスストの間には、バスが運行されており、タシュクルガンで一泊する旅程となっています。また、スストからギルギットの間にはミニバスが運行されています。中パ両国政府は、ギルギットからカシュガルまでの直通バスの運行を開始し、道路の拡幅工事も進めています。

天候


KKHの旅行に最適な時期は、春または初秋です。冬の豪雪は道路を閉鎖し、7月から8月のモンスーンは土砂崩れを引き起こす可能性があります。クンジュラブ峠国境は、毎年5月1日から10月15日の間のみ開通しています。

カラコルム・ハイウェイは、その壮大な自然と歴史的意義から、世界中の人々を魅了する場所です。この道を旅することは、単なる移動ではなく、自然と歴史、そして文化が織りなす壮大なドラマを体験することです。

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