桜桃の味

桜桃の味

『桜桃の味』（おうとうのあじ、ペルシア語: طعم گيلاس‎ Ta'm-e-Gīlāss、英語: Taste of Cherry）は、1997年に公開されたイラン映画で、著名な映画監督アッバス・キアロスタミが手掛けました。この映画は、第50回カンヌ国際映画祭において、今村昌平監督の『うなぎ』と共にパルム・ドールを受賞したことで、その評価が確立されています。

ストーリーの概要

物語は中年男性のバディを中心に展開します。彼は自らの人生を終わらせる決断をし、自殺を手伝ってくれる人を探すために四輪駆動車でテヘラン近郊をさまよいます。バディは、自分の願いを叶えるために次々と人々に接触するものの、彼に協力することを望む者は誰一人として現れません。

道中で出会うのは、クルド人の青年兵士、アフガニスタン出身の神学生、そしてトルクメン人の剥製師です。彼らはそれぞれ異なる理由でバディの申し出を断りますが、剥製師だけが後に彼の申し出を受け入れることになります。

バディが計画した自殺の方法は、山に掘った穴に身を横たえ、朝6時に来た依頼者が声をかけ、返事があれば助け起こし、返事がなければ土をかけるというものです。この冷静で計画的なアプローチは、彼の心の内に秘める葛藤を反映しています。

映画の演出

キアロスタミ監督は、この映画を通じて人生の深いテーマと死に対する姿勢を問いかけます。映画は淡々としたトーンで進行し、登場人物の対話を通じて哲学的な議論が展開される点が特徴です。特に、バディが出会う人々との会話には、彼の死に対する考え方が垣間見えます。

また、映画の中では現地の映画スタッフの姿や、俳優が撮影の合間に若い兵士と談笑するシーンが挿入されるなど、メタフィクション的な要素も取り入れられています。これにより、観客は映画の背後にある制作の現実を感じることができると同時に、物語の重さとのコントラストが生まれます。

キャストと制作

本作のキャストには、ホマユン・エルシャディとアブドルホセイン・バゲリが名を連ねています。彼らの演技は、物語に深みを与えると共に、バディの内面的な葛藤を強調する重要な役割を果たしています。

『桜桃の味』は、視覚的な美しさと哲学的な深さを兼ね備えた名作として、多くの映画ファンに愛されており、現代映画における重要な作品の一つとされています。アッバス・キアロスタミの独自の視点を通じて、死というテーマがどのように日常生活と交錯するかを探求したこの作品は、観る者に深い感動を与えることでしょう。

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