アップショット・ノットホール作戦

アップショット・ノットホール作戦

アップショット・ノットホール作戦（英: Operation Upshot-Knothole）は、1953年にアメリカ合衆国がネバダ核実験場において実施した一連の核兵器開発実験シリーズです。これは、同国がそれまでに実施した核実験の中で11番目のシリーズに位置づけられています。

背景と位置づけ

この作戦は、1952年に成功裏に終わったアイビー作戦の後継として行われ、その後の1954年に実施された、より大規模で高出力の熱核実験シリーズであるキャッスル作戦への重要な橋渡しとなりました。特に、アップショット・ノットホール作戦で試験された様々な核兵器の設計や技術、中でも熱核兵器開発に関連する装置や概念は、キャッスル作戦におけるメガトン級兵器の実用化に繋がる基礎を築きました。

特筆すべき実験

アップショット・ノットホール作戦の中で特に注目されるのは、以下の実験です。

グレイブル実験

1953年に実施されたグレイブル実験は、特徴的な試みとして、M65 280mmカノン砲を用いたW9核砲弾の実射が行われました。この歴史的な瞬間には、軍の上層部幹部が観覧に訪れ、その威力を目の当たりにしました。この実験に使用されたW9核砲弾とM65カノン砲の組み合わせは、核兵器を長距離砲で運用するという、当時の戦術核兵器開発の方向性を示すものでした。軍の上級幹部がこの実験を観覧したことは、軍事戦略における核兵器の重要性が高まっていた状況を反映しています。

また、この実験は「デザート・ロックIV演習」の一環として実施され、実に2万1千人を超える兵士が参加しました。デザート・ロックIV演習は、核爆発がもたらす環境下での部隊の行動や、兵器の効果、そして兵士の被曝に関するデータ収集の機会となりました。これは、核兵器の戦場での使用を想定した大規模な演習であり、兵士たちの核爆発への曝露やその影響についても懸念が示されることになりました。

ルース実験とレイ実験

この作戦では、カリフォルニア大学リバモア放射線研究所（現在のローレンス・リバモア国立研究所）が初めて開発を手掛けた、2つの水素化ウラン爆弾の実験も特筆すべきものです。これらの実験は「ルース」と「レイ」と名付けられましたが、残念ながら計画通りの成果は得られず、失敗に終わりました。

これらの実験は、リバモア研究所が核兵器開発の主要プレイヤーとして本格的に参画する第一歩となりました。彼らが目指したのは、既存の核分裂兵器や初期の熱核兵器とは異なるアプローチ、すなわち重水素を用いて発生させた比較的低速な中性子を利用して、核分裂反応の効率を高めるという革新的な設計でした。実験自体は期待された性能を発揮せず失敗に終わりましたが、この試みを通じて得られた技術的知見や課題は、その後のリババモア研究所による核兵器開発に生かされることになります。

作戦全体の意義

アップショット・ノットホール作戦は、単一の実験ではなく、多様な目的を持つ複数の実験から構成されていました。グレイブル実験に見られるような戦術核兵器の開発、そしてルースやレイといった新たな設計概念に基づく実験は、当時のアメリカが追求していた核兵器の多様化と高性能化の試みを象徴しています。これらの実験を通じて得られた成功と失敗の両方の経験が、その後の核開発競争、特に熱核兵器の実用化とその配備戦略に大きな影響を与えました。作戦全体が、冷戦期の初期におけるアメリカの核戦力を強化し、核抑止力を構築する上での重要な節目であったと言えます。

関連項目

核実験の一覧
核兵器
* 核爆発

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