アティカーヤ

アティカーヤの神話

アティカーヤ（梵: अतिकाय, Atikāya）は、インド神話に名を刻むラークシャサであり、叙事詩『ラーマーヤナ』にその物語が収められています。アティカーヤは、ランカーの王ラーヴァナとその第2の妻ダニヤマーリニーの間に生まれた息子であり、兄弟にはインドラジット、アクシャ、ナラーンタカ、デーヴァーンタカ、トリシラスなどがいます。彼の体躯はまるで山のように大きく、肌は黒いのが特徴です。

アティカーヤはその肉体的な偉大さだけでなく、宗教や政治に通じた知恵も併せ持つことで知られています。戦士としても非常に優れており、特に象や馬の乗りこなしに精通しています。彼はまた、弓と剣の使い手でもあり、ブラフマー神から授かった特別な鎧によって、神々やアスラ族の攻撃から身を守ることができるため、無類の強さを誇っています。神々の王インドラのヴァジュラや、ヴァルナ神の縄索さえも退ける力を持っていました。しかし、アヨーディヤーの王子ラーマとの戦争においては、兄弟のラクシュマナと対峙し、敗北を喫しました。

戦闘の場面

王弟クムバカルナの戦死を受けて、アティカーヤは仲間たちと共に出撃します。彼は頭に冠を戴き、首には花輪を巻き、数多の武器を携えた戦車を操り、1000頭の馬によって戦場に赴きます。ところが、彼の仲間たちはヴァナラ族の戦士アンガダやハヌマーン、ニーラとの戦闘で次々に倒れていく中、アティカーヤもまた平静を保てなくなります。仲間の死に激怒した彼は敵軍を撃破し、自らの名を轟かせます。

ヴァナラたちは木や岩を投げつけて応戦しますが、アティカーヤはその攻撃をなんともせずに次々と敵を射落としていきます。そして、ついにラーマと戦うことを決心し、「命を惜しむ者とは戦いたくない！」と叫びます。この言葉を聞いて、ラクシュマナは喜び勇んで応じます。アティカーヤは若者相手に戦うことに挑発を感じながらも、彼は怖れず立ち向かってきたラクシュマナに対して「我と戦おうとするならば、死者が送られることになるだろう」と挑発します。

ラクシュマナはこれに対して決して怯まず、「お前の強さがどれほどだろうと関係ない。さあ、我を相手に試してみよ」と返します。アティカーヤは怒り狂い、全力で矢を放ちますが、ラクシュマナはその矢を見事に払い落とし、反撃に転じてアティカーヤの額に傷をつけます。

両者は火の矢を放ち合い、その飛び交う矢は空中で衝突し白煙と共に消え去ります。このように、アティカーヤとラクシュマナの戦闘は熾烈を極め、どちらが勝つかわからない状況に入ります。

最後の戦い

その時、風神ヴァーユがラクシュマナに密かにささやきます。「アティカーヤはブラフマー神からの鎧で守られており、普通の武器では傷つけることができない。彼を打ち破るためには、ブラフマー神の矢を使うべきだ」と告げるのです。

ラクシュマナは、その助言に従いブラフマー神の矢を放つことを決意します。アティカーヤは彼の矢を次々と撃ち落とそうとしますが、制御が効かず、ついには頭を貫かれて倒れてしまいます。これにより、アティカーヤは敗北を喫し、壮絶な戦いが終息を迎えます。アティカーヤの物語は、力と知恵、勇気を持った戦士の姿を見事に表現しています。

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