冠

冠 (かんむり)

冠は、主に地位や階級を象徴するために頭に着ける装飾品です。古くから君主や宗教の指導者がその地位を示すために使用してきましたが、文化によっては特定の階級や地位を示すためにも用いられています。また、月桂冠のように、特に戦争やスポーツにおける勝者に与えられる冠も存在します。なかには単に装飾目的のために作られた冠もあります。

各文化圏の冠

東洋

東洋、特に儒教の影響を受けた地域では、冠をかぶることが文明の印象を与える風習とされています。日本の冠文化においては、中国からの影響を受けた要素が多数見られます。

日本

日本の冠文化は、中国に由来する部分が大きく、特に髪を切らずに結い上げた髷の上に冠をかぶるという習慣があります。特に、前漢時代には儒教が国の教えとなり、冠をかぶることが通常の風俗とされました。非漢民族である元や清の時代には、冠の習慣が廃止されたこともありますが、清時代には辮髪の習慣が強制されるなど文化的な緊張感も見られました。さらに、皇帝によって戴かれる冕冠（べんかん）など、豪華な装飾が施された冠も存在し、その特徴には前後に飾りがついていることが挙げられます。これらの冠の習慣は、日本や朝鮮にも影響を及ぼしました。

中国

古代中国では、髷の上にどのような冠をかぶるかが非常に重要であり、官職に応じたさまざまな冠が存在しました。冠の装飾には纓が付き、これは日本はもちろん、朝鮮にも伝わった重要な文化の一部となりました。清王朝の時代には皮弁冠（ひべんかん）も皇帝によって使用されましたが、これは後に廃止されましたが、琉球国では19世紀まで王冠として用いられ続けました。

西洋

西洋において冠は、王権や教皇権の象徴と見なされていました。

西欧

ヨーロッパでは王冠は君主によって、三重冠は教皇によってその権威を示すために使用されます。冠はただの装飾品ではなく、その意味するところは非常に強いものでした。

東欧

東方教会が広がる地域（東欧や東地中海）では、冠の形や使用方法において西方教会とは異なる文化が見受けられ、正教会の主教が使用するミトラ（宝冠）もその一例です。

装飾の共通性

ユーラシア大陸では、冠に用いられる装飾の形状に共通性があり、樹木状の立て飾りや鳥の形を模した冠が多く見られます。これにより、冠は単なる個人の地位を越えて、文化的なつながりをも象徴しています。

関連用語

冠に関連する言葉も多く存在し、漢字の構成要素の一つとして「冠」が使われます。また、イベントや番組名においても「冠」を用いることがあり、例えば馬主が競走馬の名前に用いることを「冠名」と呼ばれることが多いです。さらに「おかんむり」という言葉は、機嫌が悪い様子を示す表現として使われています。

特に、日本語には「星座の一つであるかんむり座」や「鳥の一種であるカンムリワシ」といったように、冠にちなんだ名称も多く存在します。自動車業界ではトヨタの「カムリ」がその名の源として挙げられますが、他にも多くの車種名に「冠」が使われていることが特徴です。

このように、冠はその文化や時代によってさまざまな形で表現され、歴史の中で重要な役割を果たしてきました。

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