アデロバシレウス

アデロバシレウス（Adelobasileus cromptoni）

アデロバシレウスは、地球上で見つかっている最古の哺乳類とされる化石種で、哺乳類や哺乳形類の祖先としても重要な位置を占めています。属名はギリシャ語の「ἀδήλος（明確でない）」と「βασιλεύς（王）」から派生し、大まかに「目立たない王」と訳されます。この種はアメリカ・テキサス州のチンリ層群で発見されました。興味深いことに、アデロバシレウスは卵生の繁殖方法を持っていたと考えられています。

概要

アデロバシレウスは中生代三畳紀後期の約2億2,500万年前に生息していたとされています。これは、これまで最古とされていたエオゾストロドンの2億1,000万年前よりもさらに1,500万年も遡ることになります。この時代、この小型哺乳類は多様な生物と共存していましたが、その生態や生活習慣についてはまだ多くが解明されていません。

1989年には、チンリ層群から糞化石の中にアデロバシレウスの頭骨の一部が発見されました。この頭骨は吻端部分が欠けていて、全長が約1.5センチ、幅は1センチに満たない小さなものでした。これらの化石から推測される体長は10センチから15センチ程度であり、現在のトガリネズミに似た外見を持っていたと考えられています。

この頭骨には、獣弓類との類似点がいくつか見つかりますが、視神経孔を含む眼窩の構造や、蝸牛の付着点がある岬角など、特に哺乳類特有の特徴も確認されています。これらは、アデロバシレウスが現在の哺乳類への進化の重要なステップであったことを示しています。

生態

アデロバシレウスの具体的な生態については分からないことが多いのですが、研究者たちはこの種が夜行性であり、昆虫を主に食べていた可能性があると考えています。彼らの生息する環境は、三畳紀の地球環境と多様な生態系が想像されるため、さまざまな捕食者や競争者との相互作用の中で生き延びていたことでしょう。

脚注

アデロバシレウスは、最初期の哺乳類たちとの関係が深く、エオゾストロドンやメガゾストロドン、ハラミアといった他の初期哺乳類との関連が示唆されています。また、コエロフィシスという初期の恐竜も同時代に存在しており、同じチンリ層群から数多くの化石が発見されています。さらに、フィトサウルスという当時の頂点捕食者も同様にこの層から発見されており、アデロバシレウスの生態的な背景をより深く理解する手助けとなります。

参考文献

• - NHK「恐竜」プロジェクト（高間大介・植田和貴） 編『恐竜vsほ乳類 1億5千万年の戦い』小林快次 監修、ダイヤモンド社、2006年。
• - Lucas, SG; Hunt, AP (1990). "The oldest mammal". New Mexico Journal of Science.
• - Lucas, SG; Luo, Z (1993). "Adelobasileus from the upper Triassic of west Texas: the oldest mammal". J. Vert. Paleont.

もう一度検索