コエロフィシス

コエロフィシス：小型肉食恐竜の謎に迫る

コエロフィシス (学名: Coelophysis) は、約2億1600万年前から1億9600万年前、北米大陸に生息していた初期の肉食恐竜です。ニューメキシコ州ゴーストランチで多数の化石が発見されたことで知られています。体長は約3メートル、体重は30キログラムに満たない、細身で華奢な体格が特徴です。

形態

コエロフィシスは、長くしなやかな首と頑丈な尾を持ち、その体格の多くを占めていました。驚くべきことに、後の竜脚類にも見られるような、体重軽減のための骨の中空構造を持っていたことが分かっています。これは初期の恐竜において特筆すべき特徴です。恐竜の祖先である槽歯類との類似点も認められますが、脚が体の真下に位置するなど、明確な恐竜の特徴も備えています。

頭部は長く、多くの穴が開いて軽量化されており、フレキシブルな首の先に位置していました。この軽量化された頭骨は、後の恐竜にも受け継がれた特徴です。鋭く、ギザギザの歯を持ち、小型の動物を捕食していたと考えられています。手には4本の指がありますが、1本は退化していました。これは、5本の指を持つ初期の恐竜から、後の獣脚類の2～3本の指への進化段階を示唆しています。3本の指を持つ足は、現代の鳥類の足と似た構造をしていたことから、足跡化石はかつて始祖鳥のものと誤認されていたほどです。

行動と生態

かつては、成体のコエロフィシスの化石の腹部に幼体の化石が含まれていることから共食い説が提唱されていましたが、現在の研究では、それはヘスペロスクスというワニ類であり、単なる獲物であったことが分かっています。また、卵胎生説も、卵化石の発見がないことから提唱されましたが、卵化石は一般的に保存状態が悪く発見が難しいことを考えると、確証はありません。

コエロフィシスは、スカベンジャー（腐肉食）ではなく、積極的な狩りをしていたと考えられています。上顎の歯は大きく後方に曲がっていて、顎の筋肉の配置は上下の顎がこすり合う構造になっていました。これはまるで電動カービングナイフのような働きをしたと思われます。化石の産状から、小型獣脚類と同様に群れで生活し、狩りをしていた可能性が高いです。75センチメートルにも及ぶ歩幅から、迅速な移動能力を持っていたと考えられ、三畳紀の北アメリカの高地にある森林や開けた平原を自由に動き回っていたでしょう。

化石には、華奢なタイプとやや頑丈なタイプの2種類が存在します。当初は別種と考えられていましたが、現在は性差であるという説が有力です。

分類

コエロフィシスの分類は、コエロフィシス科（もしくはポドケサウルス科）に属すると考えられていますが、依然として議論の余地があります。ケラトサウルス類、もしくはケラトサウルス類-テタヌラ類の基部をなす獣脚類であることは確実ですが、どちらに分類されるかは現在でも研究者間で意見が分かれています。

模式種の選定をめぐっても混乱がありました。ゴーストランチ産出の標本は、当初の模式種とは異なることが判明し、新たな学名リオアリバサウルスが提案されましたが、国際動物命名委員会の投票により、ゴーストランチ産出の標本がコエロフィシスの事実上の模式標本とされました。一方、当初の模式種にはエウコエロフィシスという新たな学名が与えられています。

多くの標本が当初コエロフィシス属の新種として分類されましたが、後に別属であることが判明し、再分類が行われました。例えば、C. holyokensis は現在 Podokesaurus holyokensis として知られ、C. posthumus は Halticosaurus longotarsus とされています。

豆知識

コエロフィシスは、1998年にスペースシャトル・エンデバーによって宇宙へ運ばれた2番目の恐竜です。カーネギー自然史博物館のコエロフィシスの頭骨は、地球に帰還する前に宇宙ステーションミールにも運ばれました。また、ニューメキシコ州の州の化石にも指定されています。

関連項目

恐竜の一覧
絶滅した動物の一覧

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