アトリエ・ワン

アトリエ・ワン

アトリエ・ワンは、日本を拠点に活動する建築家ユニットであり、1992年にその活動を開始しました。中心メンバーは、建築家の塚本由晴氏と貝島桃代氏です。彼らの活動は個人住宅の設計が中心ですが、これに留まらず、都市空間のリサーチや美術展への参加など、多岐にわたります。

名称の由来

ユニット名の「ワン」は、数字の「one」ではなく、犬の鳴き声である「ワン！」に由来します。そのため、言語圏によって名称の表記が異なり、英語では「Atelier Bow-Wow」、中国語では「犬吠工作室」と記されます。

活動の特徴と研究

アトリエ・ワンの活動の大きな特徴は、都市環境、特に東京のような高密な都市における建築や人々の営みを深く観察し、その発見を設計に反映させる点にあります。

彼らはTeam Made In Tokyo (TMIT)を結成し、1996年からの都市リサーチの成果をウェブサイトで公開し、2001年には書籍『メイド・イン・トーキョー』（鹿島出版会）としてまとめました。この著作では、東京という都市を綿密に観察し、合理性や実用性を追求した結果生まれた、一見奇妙でありながらも独特な建築群に着目しています。

さらに、東京工業大学の塚本研究室との共同プロジェクトでは、「ペット・アーキテクチャー」という概念を提唱しました。これは、都市の建物と建物の間に生まれたわずかなスペースに建てられた、小規模で特徴的な建築物を指し、彼らはこうした建築物の観察を積極的に行いました。このリサーチは2000年の展覧会で発表された後、2001年に『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』（ワールド・フォトプレス）として刊行されています。

このように、彼らは著名な建築物だけでなく、名もなき土木構造物や小さな建築物にも等しく価値を見出し、自らの建築思想や設計に活かしている点が大きな特徴と言えます。

評価と議論

建築評論家の飯島洋一氏は彼らを「ユニット派」と位置づけ、批判的な評価を下しましたが、塚本、貝島両氏自身や、五十嵐太郎氏、永江朗氏といった他の論者はこの評価の妥当性に疑問を呈しています。

主な構成人物

塚本 由晴（つかもと よしはる）
1965年神奈川県生まれ。1987年に東京工業大学建築学科を卒業し、坂本一成研究室に所属。パリ建築大学ベルヴィル校への留学を経て、1992年に貝島桃代氏と共にアトリエ・ワンを結成しました。1994年に東京工業大学大学院博士課程を修了。アトリエ・ワンでの設計活動に加え、東京工業大学建築学科で教授を務め、教育活動にも力を入れています。2022年には貝島氏と共にウルフ賞芸術部門（建築分野）を受賞しています。

貝島 桃代（かいじま ももよ）
1969年東京都生まれ。1991年に日本女子大学住居学科を卒業後、1992年に塚本由晴氏とアトリエ・ワンを結成。1994年に東京工業大学大学院修士課程を修了しました。スイス連邦工科大学への留学・客員教授歴を持つほか、筑波大学やクイーンズランド大学でも教鞭を執りました。2017年からはスイス連邦工科大学チューリッヒ校の教授（建築ふるまい学）として活躍し、同校にStudio Bow-Wow ETHZを共同開設しています。2022年に塚本氏と共にウルフ賞芸術部門（建築分野）を受賞しました。

元構成人物

寺内 美紀子（てらうち みきこ）
1966年香川県生まれ。九州大学工学部建築学科を卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。東京工業大学の技術補佐員、助手などを経て、2001年にアトリエ・ワンに共同主宰として参加しましたが、2003年に脱退・独立し、寺内美紀子建築設計事務所を設立しました。その後は茨城大学や信州大学で教職を務め、信州大学工学部建築学科教授に就任しています。

著書

アトリエ・ワン名義、または主要メンバーの単著・共著として多数の書籍を刊行しています。

もっと小さな家
ペット・アーキテクチャー・ガイドブック
メイド・イン・トーキョー
「小さな家」の気づき（塚本由晴 著）
ブロークン・パリ
アトリエ・ワン・フロム・ポスト・バブル・シティ
図解アトリエ・ワン
アトリエ・ワン　空間の響き／響きの空間　現代建築家コンセプト・シリーズ 5
建築からみた まち いえ たてもの のシナリオ（貝島桃代 著）
図解２アトリエ・ワン
アトリエ・ワン　コモナリティーズ - ふるまいの生産

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