アドベ

アドベとは

アドベ（Adobe）は、砂、砂質粘土、わらなどの有機物を混ぜて作られる天然の建築材料です。これらの材料を水で練り、木製の型枠に入れて天日で乾燥させることでレンガ状にします。アドベは、ヨーロッパのコブや日干しレンガと似た製法で作られ、古くから世界各地で建築材料として利用されてきました。

アドベの歴史と分布

アドベ建築は非常に耐久性に優れており、地球上に現存する最古の建築物にも用いられています。特に、中東、北アフリカ、スペインなど乾燥した地域で一般的ですが、アメリカ大陸でも古くから利用されてきました。アメリカ南西部のプエブロ、中央アメリカ、南米のアンデス山脈地域では、先住民によって数百年も前から使われ続けています。これらの地域では、アドベに加えて石材が用いられることもあります。

アドベの製法は、16世紀にスペイン人によってメキシコやペルーに伝えられました。アドベレンガのサイズは様々で、通常のレンガの大きさから、1～2ヤード（約0.9～1.8メートル）のものまで存在します。

「アドベ」という言葉は、約4000年の歴史の中で発音と意味がほとんど変わっていません。古代エジプト語の「泥のレンガ」を意味する言葉が、コプト・エジプト語、アラビア語へと変化し、古スペイン語に取り入れられ「アドベ」となりました。この言葉が英語に入ったのは18世紀初頭のことです。

現代では、アドベは特にアメリカ南西部のプエブロ建築を模倣したスタイルを指すこともあります。また、アドベ風に見せるためにスタッコ仕上げを施した建築物も存在します。

アドベの素材

アドベレンガの主な材料は、水で練った粘土（砂を含む）と、わらや動物の糞などの有機物です。わらはレンガの強度を高め、均等に乾燥させやすくする役割があります。動物の糞も同様の効果があり、さらに昆虫を避ける効果もあるとされています。

アドベレンガの作り方

アドベレンガは、底のない型枠を使って作られます。一般的なサイズは36cm×25cm程度ですが、他のサイズも使用されます。型枠に土と有機物を混ぜたものを詰めて成形し、すぐに型枠を取り外します。数時間乾燥させた後、レンガを立てて十分に乾燥させます。日陰でゆっくりと乾燥させることで、ひび割れを防ぐことができます。

レンガを作るよりもわらの量を減らした混合物は、壁の内外のモルタルや漆喰として使用されます。雨から保護するために、漆喰には石灰ベースのセメントが用いられることもあります。

アドベ建築の例

アドベ建築として最大のものは、イランのアルゲ・バムです。しかし、2003年の地震で甚大な被害を受けました。その他にも、ペルーのモチェ文化のワカ・デル・ソル神殿や、チャン・チャン、タンボ・コロラドなどの遺跡がアドベ建築の例として挙げられます。

アドベの熱的性質

アドベ壁は、優れた蓄熱材として機能します。特に北半球では、南向きのアドベ壁は太陽光を吸収し、室内の温度を調整するために利用されます。アドベ壁は、日中は涼しく保ち、夜間は蓄えた熱を放出します。ただし、壁が厚すぎると夜間の放熱が難しくなるため、適切な厚さが重要です。また、外壁をガラスで覆うことで、熱の蓄積効率を高めることができます。

このような壁は、受動的ソーラー建築設計において「トロンブ壁」と呼ばれています。アドベ壁は熱を蓄える密度が高いため、熱帯気候で特に有効ですが、温帯気候では地中や壁からの熱損失が大きいため、温度調節の効果は限定的です。

外部リンク

The Natural Building Network: 天然建材を扱う建築家、専門家、資料のサイト（英語）
Earth Architecture: 現代の土を使った建築物に関するサイト（英語）
Building With Awareness: アドビ壁の作り方と蓄熱壁としての使い方を解説したDVD。
Cal-Earth: スーパーアドービの開発機関（英語）
Kleiwerks: 土を使った天然素材の建築を推進する国際機関（英語）
EARTHA: イースト・アングリア地方の歴史的土建築物の維持・保存機関（英語）
Kerpic.org: 土を石膏で安定させた建材の研究サイト（英語）

関連項目

プエブロ
サンタフェ様式
アルゲ・バム
* チャン・チャン

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