アナクレトゥス2世 (対立教皇)

アナクレトゥス2世：12世紀の教皇位継承争いと教会分裂

アナクレトゥス2世（? - 1138年1月25日、本名ピエトロ・ピエルレオニ）は、12世紀にローマ教皇位を巡る争いにおいて、インノケンティウス2世に対抗する対立教皇として君臨した人物です。彼の在位期間は1130年2月14日から1138年1月25日でした。

パリでの学問と枢機卿への昇進

ローマ出身のピエルレオニは、フランスのパリで学問を修め、その後クリュニー修道院で修道士となりました。彼の能力は高く評価され、1111年（異説あり）パスカリス2世によって助祭枢機卿に叙任されます。その後も歴代教皇の信任が厚く、1120年にはカリストゥス2世により司祭枢機卿に昇進。イングランドやフランスへの教皇特使として派遣されるなど、教会における重要な役割を担いました。

教皇位継承と教会分裂

1130年2月、ホノリウス2世の死去に伴い、教皇位継承問題が勃発しました。ピエルレオニは有力な候補者の一人でしたが、少数の枢機卿がインノケンティウス2世を擁立。この対立は、多くの枢機卿やローマ市民の支持を得たピエルレオニがアナクレトゥス2世として教皇位に就くことで、激化します。彼は自身の財力を利用してローマを掌握し、インノケンティウス2世をローマから追放、教会は深刻な分裂状態に陥りました。

ヨーロッパ諸国の介入

この教会分裂は、ヨーロッパの政治情勢に大きな影響を与えました。フランスに亡命したインノケンティウス2世は、当時高い権威を持っていたクレルヴォーのベルナルドゥスをはじめ、神聖ローマ皇帝ロタール3世、フランス王ルイ6世、東ローマ皇帝ヨハネス2世コムネノスらの支持を得ました。一方、アナクレトゥス2世はシチリア伯ルッジェーロ2世と同盟し、シチリア王への戴冠と引き換えに彼の支持を取り付け、ローマにおける権力を維持しました。アキテーヌ公ギヨーム10世もアナクレトゥス2世を支持しました。

ロタール3世の介入と教会分裂の継続

1133年、ロタール3世はインノケンティウス2世を支持してローマに進軍、インノケンティウス2世もローマに帰還しました。しかし、ロタール3世が帰国すると、アナクレトゥス2世支持勢力は再びインノケンティウス2世を追放、教会分裂は継続しました。アナクレトゥス2世自身は在位期間中ずっとレオ城に監禁された状態にありました。そして1138年1月25日、彼はレオ城で死去しました。

教会分裂の終結

アナクレトゥス2世の死後、彼の支持者たちはウィクトル4世を次の対立教皇に擁立しましたが、短期間で退位しました。最終的に、1139年に開催された第2ラテラン公会議において、インノケンティウス2世が教皇として承認され、ルッジェーロ2世のシチリア王位も承認されることで、長きに渡る教会分裂は終結しました。

まとめ

アナクレトゥス2世の生涯は、12世紀のヨーロッパにおける教皇権力争いと教会分裂の激しさを象徴的に示しています。彼の存在は、単なる対立教皇という枠を超え、当時の政治と宗教が複雑に絡み合った時代の縮図として、歴史的意義を持っています。彼の死後も続く教会分裂の終結には、ヨーロッパ列強の政治的思惑や、教皇支持勢力の巧みな外交戦略が大きく関わっていました。アナクレトゥス2世の物語は、権力闘争、宗教的対立、そしてヨーロッパの政治的均衡が複雑に絡み合った、中世ヨーロッパ史の一断面を私たちに教えてくれます。

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