アナトーリ・リャードフ

アナトーリ・コンスタンティーノヴィチ・リャードフ（1855年5月11日 - 1914年8月28日）は、ロシアの作曲家、音楽教師、指揮者として知られています。サンクトペテルブルクで音楽家の家庭に生まれ、幼少期から音楽に触れる環境で育ちました。彼の音楽的才能は早くから開花し、特にムソルグスキーからは高く評価されていました。

生涯

リャードフは、父親であるコンスタンティン・リャードフから音楽の手ほどきを受け、その後サンクトペテルブルク音楽院でピアノとヴァイオリンを学びました。しかし、やがて器楽演奏よりも作曲に興味を持つようになり、対位法とフーガの研究に没頭しました。彼は、リムスキー＝コルサコフの作曲科に在籍していましたが、欠席が多かったため一時除籍されました。その後、再度学び直し卒業を果たしています。

1878年からは、サンクトペテルブルク音楽院で教鞭を執り、プロコフィエフ、ミャスコフスキー、グネーシン、アサフィエフなど、後に著名となる多くの音楽家を育てました。1905年には、院長であったリムスキー＝コルサコフが解雇された際、抗議の意を示すために一時的に辞職するなど、師への敬意を示す一面もありました。

リャードフは1884年に結婚し、ノヴゴロド地方に別荘を所有するようになります。彼は、夏の間この地で作曲活動に専念し、1914年にこの地で亡くなりました。

リャードフは、技術的には非常に優れた音楽家でしたが、その不甲斐なさから大作を完成させることができませんでした。ディアギレフからバレエ音楽の作曲を依頼された際にも、その気質のせいで実現しませんでした。しかし、彼の小品は今日でも多くの人に愛されています。また、記憶力や画才にも優れており、周囲の人々を驚かせていたという逸話も残っています。

作品

リャードフの作品数は、彼の才能からすれば決して多くはありません。それは、怠惰な性格や自信のなさからくる自己批判によるものでした。彼の作品の多くは、既存の素材を基にした変奏曲や編曲であり、特に「8つのロシア民謡」のような作品が知られています。

ピアノ曲では、「オルゴール」が最も有名であり、ショパンの影響を受けた旋律や構成が特徴的です。しかし、ショパンのような大規模な作品は残していません。

リャードフの管弦楽作品は、標題音楽が多く、ロシアの民話や神話を題材にしたものが多く見られます。「バーバ・ヤガー」、「キキーモラ」、「魔法にかけられた湖」などは、特に人気のある作品です。これらの作品は、民族的な色彩が豊かで、リャードフの音楽的特徴をよく表しています。

晩年の作品では、スクリャービンのように「拡張された調性」を試みている点も注目されます。

主要作品

ピアノ曲「古き時代より」Op.21（1889年）-後に管弦楽編曲
ピアノ曲「音楽の玉手箱（おどけたワルツ）」Op.32（1893年）-後に管弦楽編曲
ピアノ曲「グリンカの主題による変奏曲」Op.35（1894年）
ピアノ曲「舟歌 嬰ヘ長調」Op.44（1898年）
ピアノ曲「ポーランド民謡の主題による変奏曲」Op.51（1901年）
交響詩「バーバ・ヤガー」Op.56（1905年）
管弦楽曲「8つのロシア民謡」Op.58（1906年）
交響詩「魔法にかけられた湖」Op.62（1909年）
交響詩「キキーモラ」Op.63（1909年）
管弦楽曲「アマゾン女族の踊り」Op.65（1910年）
交響詩「ヨハネの黙示録より」Op.66（1912年）
管弦楽曲「挽歌」Op.67（1914年）


リャードフの音楽は、その独特な世界観と民族的な色彩によって、今日でも多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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