アノドントサウルス

アノドントサウルス（Anodontosaurus）

アノドントサウルスは、アンキロサウルス科アンキロサウルス亜科に属する恐竜の一種です。化石はカナダ、アルバータ州南部のホースシューキャニオン累層から発見されており、後期白亜紀後期（カンパニア期からマーストリヒト期中期、約7280万年前から6700万年前）の地層から出土しています。現在、アノドントサウルス属には、唯一の種である Anodontosaurus lambei のみが含まれています。

発見と命名

アノドントサウルスは、1928年にチャールズ・モートラム・スタンバーグによって命名されました。この時使用されたのは、ホロタイプ標本と呼ばれるもので、頭骨、頸部の半円状の装飾、装甲、そしてその他の体の骨格の一部が含まれていました。この化石は、1916年にスタンバーグ自身がアルバータ州モリンの南方約13kmに位置するカナダ自然史博物館の発掘地で発見したものです。発掘された地層は、ホースシューキャニオン累層のカンパニア期後期からマーストリヒト期前期（約7100万年前から7000万年前）に相当します。しかし、化石が発掘された時点で、骨格は既に損傷を受けていました。

属名である「アノドントサウルス」は、古代ギリシャ語で「歯のないトカゲ」を意味します。これは、化石の圧縮による損傷で歯が外れていたこと、そして頭骨の下と左の下顎の上に様々な平らで丸い化石が移動していたことから、スタンバーグがこれらを通常の歯列の代わりに存在する大きな「摩砕プレート」であると推定したことに由来します。種小名の lambei は、ホロタイプを保管しているカナダ地質調査局の地質学者であり古生物学者でもあるローレンス・ラムに献名されたものです。

分類

1971年、ウォルター・クームズは、アノドントサウルスが北アメリカの後期白亜紀カンパニア期に生息していた唯一のアンキロサウルス科の種であると結論付けました。彼はまた、Anodontosaurus lambei、Dyoplosaurus acutosquameus、Scolosaurus cutleri を Euoplocephalus tutus のシノニムであるとしました。この Anodontosaurus lambei と Euoplocephalus tutus のシノニム化は一般的に受け入れられ、CMN 8530 は E. tutus の標本とされました。しかし、その後の研究により、アノドントサウルスはエウオプロケファルスとは区別可能な正当な分類群であるという主張がなされました。

2009年のArbourらの研究では、Dyoplosaurus が正当な属として再記載され、2010年のVictoria Arbourの研究では、アノドントサウルスもエウオプロケファルスと区別できる独自の属であると主張されました。Arbourの研究によれば、アノドントサウルスは、頭骨、頸部の半円状の装飾、そして三角形のこぶがあり尖っている尾の棍棒の形態によって識別できます。さらに、彼女はホースシューキャニオン累層の全てのアンキロサウルス亜科の標本を、エウオプロケファルスではなくアノドントサウルスのものとして扱うことを提唱しました。

アノドントサウルスの正当性は、その後の二つの研究でも支持されました。Paul PenkalskiとWilliam T. Blowsによる研究では、Scolosaurus もまた正当な分類群であるとされました。Penkalski (2013) では、元々はエウオプロケファルスのものとされていた標本に基づいて、Oohkotokia の命名と記載が行われました。Penkalski (2013) では、アンキロサウルス亜科の標本に関する小規模な系統解析が行われ、その結果、アノドントサウルスのものとすることが可能な標本はホロタイプのみであると結論付けられました。アノドントサウルスは、エウオプロケファルスのホロタイプや、他にこの属のものとされている標本とは多分岐として配置され、一方 Oohkotokia は、Dyoplosaurus や Scolosaurus のものと考えられる標本からなるクレードに配置されました。

これらの研究により、アノドントサウルスは、独自の特徴を持つアンキロサウルス科の恐竜として、再び認識されるようになりました。

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