アバルト・124スパイダー

アバルト 124スパイダー：マツダとフィアットの協業が生んだスポーツオープンカー

アバルト 124スパイダーは、マツダのND型ロードスターをベースに、フィアットが開発し、アバルトがチューニングを施した2シーターオープンスポーツカーです。世界中どこで製造されたものでも、広島県にあるマツダ宇品第1工場で生産されるという点が大きな特徴です。日本の自動車型式認証ではマツダを製造事業者とする国産車として扱われ、他の国産車とは異なる17桁の車両識別番号（VIN）が与えられます。日本市場では、フィアットブランドでの販売はなく、アバルト仕様のみが提供されました。発売から4年間で、日本国内では2224台が登録されました。

開発の経緯と背景

2013年1月、フィアットとマツダは技術提携に合意しました。当初の計画では、2015年からマツダがロードスターをベースとした後輪駆動の2シーターオープンカーをアルファロメオ向けに供給することになっていました。マツダにとっては本社工場の生産効率向上、フィアットにとってはアルファロメオの世界販売台数増加が目標でした。

しかし、2015年11月18日にロサンゼルスオートショーで発表されたのは、アルファロメオブランドではなくフィアットブランドの「124スパイダー」でした。基本骨格とインテリアはロードスターと共通ですが、初代124スパイダーを彷彿とさせる独自のデザインが採用されています。エンジンはマツダのSKYACTIV-Gではなく、フィアット製の1.4Lマルチエアエンジンを搭載しています。

翌2016年2月、ジュネーブモーターショーでアバルト版「アバルト 124スパイダー」が公開されました。フィアット版をベースに、ブレンボ製ブレーキ、ビルシュタイン製ダンパー、レコルト・モンツァ製マフラー、トルセンLSDなどを装備し、スポーティな走りを追求したモデルです。

2020年には、フィアット版と合わせて生産が終了しました。フィアットCEOのオリビエ・フランソワは、市場のニッチさ、ブランド戦略の変更などを理由に生産終了を決断したと述べています。

走りの性能とラリー仕様

アバルト124スパイダーは、優れたハンドリングとスポーティな走りが特徴です。FIA R-GTカテゴリーに参戦するラリー仕様車も存在し、300PSを発生する1.8Lターボエンジンを搭載しています。

ロードスターとの比較：細部へのこだわり

アバルト124スパイダーはロードスターをベースにしながらも、内外装において多くの差別化が図られています。エクステリアでは、フロントグリルやヘッドライトなど、より力強い印象のデザインが採用され、全長もロードスターより長く、トランク容量も大きくなっています。リアフォグランプの装備や位置なども異なります。

インテリアはロードスターと共通点が多いものの、ステアリングホイールやセンターアームレスト、スピードメーターなど、細部のデザインが変更されています。また、マニュアル車にもSPORTモードスイッチが装備され、エンジンの特性を変化させることができます。カーナビゲーションシステムはマツダコネクトをベースにしていますが、アバルトのロゴが表示されるなど、ブランドアイデンティティが反映されています。

トランスミッションは、マニュアル車ではNC型ロードスター用のものを採用し、オートマチック車はロードスターと共通のアイシンAW製6速電子制御ATですが、最終減速比は異なります。

フィアット124スパイダーとの違い

アバルト124スパイダーは、フィアット124スパイダーをベースにチューニングが施されています。エンジン出力は140馬力から170馬力に向上し、足回りもスポーツサスペンションとブレンボ製ブレーキ、トルセンLSDの採用により、スポーティな走りが実現しています。エンジンはイタリアから輸入され、マツダ宇品工場で組み付けられます。

まとめ

アバルト124スパイダーは、マツダのロードスターをベースとしながらも、アバルト独自のチューニングとデザインによって、個性的なスポーツオープンカーとして完成しています。日本市場では限定的な販売台数となりましたが、その高い走行性能と魅力的なデザインによって、多くのファンを獲得しました。 日本での希少性も相まって、中古車市場での人気も高いモデルです。

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