アビゲイル (ファイナルファイト)

アビゲイル

アビゲイルは、カプコンが手掛けるベルトスクロールアクションゲーム『ファイナルファイト』および対戦型格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズに登場するキャラクターです。初登場は『ファイナルファイト』で、悪の組織マッドギアの幹部としてメトロシティのベイエリア（湾岸地区）を支配するボスとして立ちはだかりました。黒髪のモヒカンに顔のメイク、そして圧倒的な巨体が特徴的な人物です。後に『ストリートファイターV』（以下『V』と表記）にて、初めてプレイヤーが操作できるキャラクターとして参戦しました。『V』では、日本語版ボイスを竹内良太氏、英語版ボイスをザンダー・モーブス氏が担当しています。

『ファイナルファイト』での登場

『ファイナルファイト』では、ベイエリアを舞台とするステージのボスキャラクターとして登場します。マッドギアの中でも特に怪力を誇るとされますが、同時に最も頭が悪いとも評されています。他のボスキャラクターと比較して、その巨大な体格から繰り出される攻撃は範囲が広く、威力も非常に高いのが特徴です。同じマッドギアの雑魚キャラクターであるアンドレと体格や服装は似ていますが、アビゲイル独自の技を多く持ち合わせています。例えば、アンドレの体当たりに代わる突進パンチや、相手を掴んで投げ飛ばす豪快な投げ技（これは空中の相手にも有効な対空投げとしても機能します）などを使用します。また、自身の体を赤く変色させて攻撃力を高める能力も持っています。

ゲームボーイアドバンスで発売された『ファイナルファイトONE』では、主人公のコーディーに対して「俺をただのアンドレたちと一緒に見るな」と発言するシーンがあり、アンドレと同一視されることを嫌っている様子が描かれました。

一方で、ファミリーコンピュータ版の『マイティファイナルファイト』では、クイズによって頭脳を鍛錬しており、「マッドギアのクイズ王」を自称するユニークな一面を見せます。この作品では、ボス戦前にゲーム内容に関するクイズを出題し、全問正解するとボーナスが得られるという特別な演出がありました。

『ストリートファイター』シリーズでの活躍

『ストリートファイター』シリーズには、『ストリートファイターZERO2』や『ウルトラストリートファイターIV』で背景キャラクターとして登場したことはありますが、本格的なプレイアブルキャラクターとしての参戦は『ストリートファイターV』が初めてです。

『V』の世界では、マッドギア壊滅後もベイエリアを拠点に活動しており、なんと「ABIGAIL SCRAP METAL」という車の改造やスクラップを請け負う会社の社長を務めています。この設定に伴い、車好きという新たなパーソナリティが加わりました。上腕にタイヤを巻いたり、ベルトに小さなタイヤをストラップとして付けるなど、その外見にも反映されています。対戦相手への勝利コメントでも車関連の話題を出すことが多いです。彼の会社には、『ファイナルファイト』に登場した雑魚キャラクターであるアクセル、J、ロキシーが従業員として働いています。しかし、アビゲイルは感情が高ぶると周囲を見境なく暴れ回ることがあり、部下たちからは恐れられています。

『V』の個別ストーリーモードでは、車を貸したことを忘れてしまい、愛車を失くしたと思い込んで路上で泣き叫びながらエンジンの声真似をするという奇行に走り、それに反応したキャラクターたちと次々に戦うことになります。彼の「エンジンの雄叫び、魂の叫び」は、ほとんどのキャラクターには理解されませんが、アレックスだけは「6.5リッター V8 ターボディーゼル」と正確に見抜いています。

出身地設定にも変更があり、『ファイナルファイト』でのオランダから、『V』ではパスポート申請をきっかけにカナダ出身であったことが判明しました。『V』でのモヒカンは、真上から見るとカナダの国旗にも描かれているメイプルリーフの形をしています。

『V』にアビゲイルが追加された際に同時に実装された「Metro City Bay Area」ステージは、『ファイナルファイト』でアビゲイルがボスとして登場したステージがモデルとなっており、背景には彼の会社である「ABIGAIL SCRAP METAL」の建物が見えます。また、このステージはラウンドの進行と共に時間帯が夜から朝へと変化するという演出があります。

開発においては、『V』に格闘ゲーム史上でも屈指の巨大なプレイヤーキャラクターを登場させたいというコンセプトがあり、これまで『ファイナルファイト リベンジ』を含めて3D化された経験がなかったことも、彼が選ばれた理由の一つとされています。彼は、シーズンごとのテーマとは別に、ディレクターの中山貴之氏が個人的に選出する「中山枠」のキャラクターとして登場しました。

戦闘スタイルと主な技

アビゲイルの戦闘スタイルは、その巨体と怪力を活かした力任せで豪快なファイトが特徴です。相手のガードを力強く崩す大振りのパンチやビンタ、さらにはデコピンといった個性的な攻撃を繰り出します。巨体ゆえにリーチが非常に長く、攻撃力も絶大ですが、移動やジャンプといった機動力は低い傾向にあります。しかし、個々の動きには素早い面も見られます。

彼の技には車に関連した名前が多く付けられています。例えば、腕を振り上げることで簡易対空になる「クラッチスラップ」や、前転しながら足を出す二段技「ダイナモキック」といった通常技があります。

Vシステムとしては、飛び上がってドロップキックを繰り出すVリバーサル「オンタリオドロップ」や、ポージング中に攻撃を受けることで打撃を弾くVスキル[I]「ハンガビー・ハイ/ロー」、画面外からタイヤを転がして攻撃するVスキル[II]「カモンスペアタイヤ」などがあります。

Vトリガー[I]「マックスパワー」を発動すると全身が赤くなり、一部の技が強化されます。この状態では、溜め技で相手の攻撃を弾きつつガードを崩す強力な技（イグナイトナックル、スパークナックルなど）を使用できます。
Vトリガー[II]「ハイブリッドチャージ」発動中は、『ファイナルファイト』での強化突進を再現した必殺技「メトロクラッシュ」が使用可能となり、溜めることでクリティカルアーツを含むあらゆる飛び道具をも弾く強力な突進攻撃を放てます。

他にも、相手を掴んでデコピンで吹き飛ばす「レッドリーフ」や、力強く地面に叩きつける投げ技、力を溜めて様々な必殺技に派生する「ナイトロチャージ」（元ネタの突進や投げ技を含む）など、個性豊かでパワフルな技を多数持ち合わせています。フィニッシュ技であるクリティカルアーツ「アビゲイラー」は、相手を掴んで天井に頭を埋め込み、連続パンチで追撃するド迫力の演出となっています。

アビゲイルは、『ファイナルファイト』のパワフルなボスキャラクターから、『ストリートファイターV』で新たな個性と背景設定を得て、格闘ゲームの世界に強烈なインパクトを残す存在となりました。

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主な登場作品:
ファイナルファイト
ストリートファイターV

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